都立神代植物公園(調布市深大寺元町5、TEL 042-483-2300)で現在、「世界一醜い花」といわれるショクダイオオコンニャクのつぼみが葉と共に成長している。このような形で開花を迎えるのは「世界2例目では」と注目を集めている。
2015年に「ショクダイオオコンニャク」が開花した際の様子。写真左の職員(身長約170cm)から花の大きさがわかる
ショクダイオオコンニャクはサトイモ科コンニャク属で、インドネシアのスマトラ島に自生する。芋(塊茎=かいけい)から1枚の葉が大きな傘のように長く伸び、成長を繰り返す。栄養を十分に蓄えると数年に一度、花芽になり開花する。花序は中央に「付属体」が立ち周囲を「仏炎苞(ぶつえんほう)」が取り囲み、全体の姿が燭台(しょくだい)のように見える。大きなものは高さ3メートル以上、直径1メートル以上になり「世界最大級の花」といわれる。
今回開花すると国内25例目、同園では6例目(うち1例は小石川植物園から預かり展示中に開花)。花は夕方から徐々に開き、夜に受粉を助ける甲虫を集めるため強烈な腐敗臭を放つ。臭いは翌日に減り、2日間ほどで仏炎苞が閉じて、数日後に全体が倒れる。
間もなく咲く個体は、2021年6月に4度目の花を咲かせたもの。植え替えて葉が成長して芋に栄養を蓄えた後、休眠を経て今年10月3日、さらに植え替えを行った。当時既に小さな芽が出ており「葉になるか花になるか」と注目された。11月21日に芽の先端から葉が出たが、芽の脇が膨らんでいて翌22日、花(付属体)も姿を現した。
同園によると、「葉と花が同時に出たのは、国内では聞いたことがない。海外では2017(平成29)年、オーストラリアのアデレード植物園で同様の咲き方をした例がある。このまま順調に咲けば、世界2例目と考えられる」という。
芋の生態に詳しい小石川植物園(文京区)の邑田仁さんは「この植物の葉は、数枚の鞘状葉と大きく成長する1枚の普通葉から成る。開花年は普通葉を形成せず花序になるが、今回は花序に一番近い部分に普通葉も形成されたのでは。サトイモ科テンナンショウ属などで見られる」と見解を示す。
過去5回の開花に成功している筑波実験植物園(茨城県つくば市)の遊川知久さんは「現地でも希少な植物で謎が多く、2000(平成12)年以降少しずつ栽培ノウハウが蓄積されてきた。しかし、開花データはまだ少なくて分からないことが多い」と話す。
公園広報の土方千鶴さんは「通常の開花なら過去例を参考にできるが、今回は異例な形なのでどう咲くのか見守っている。日々の変化をSNSで発信しているので、葉と共に咲く花を皆さんに見ていただきたい」と話す。「12月5日は臨時開園し、開花翌日と翌々日の開園時間を8時30分に繰り上げるので早めの来園を」と呼びかけている。
通常の開園時間は9時30分~17時(入園は16時まで)。月曜休園(祝日の場合は翌日)。入園料は、一般=500円、65歳以上=250円、中学生=200円(都内在住在学の中学生は無料)、小学生以下無料。