日本天文学会は3月11日、国立天文台(三鷹市大沢2)の「レプソルド子午儀(しごぎ)及びレプソルド子午儀室」と、電気通信大学(調布市調布ケ丘1)の「星間塵(せいかんじん)合成実験装置」を2023年度(第6回)日本天文遺産に認定した。
国立天文台三鷹キャンパスにある「レプソルド子午儀室」(現 子午儀資料館) 国立天文台提供
日本天文遺産は日本の天文学・暦学において歴史的意義を認められた史跡や事物で、今回新たに(日本初の民間天文台「倉敷天文台と関連遺産」を含めた)3件が加わり15件になった。
レプソルド子午儀(国指定重要文化財)は1880(明治13)年にドイツで製造され、東京府麻布区飯倉(現東京都港区麻布台)に設置された観測装置。天体の南中時刻や高度を正確に測ることで、経度を測定し時刻を決める役割を果たした。同地点は日本経緯度原点になっている。1924(大正13)年に東京天文台(現国立天文台)が北多摩郡三鷹村(現三鷹市)へ移転してからは、太陽系天体や恒星の位置を観測した。日本初の本格的な星表に必要な恒星の赤経決定に使われ、1963(昭和38)年に役目を終えた。今回「140年以上の歴史を持った基本的な天文観測装置として、日本の天文学史上貴重な望遠鏡である」として認定された。
レプソルド子午儀室(登録有形文化財)は三鷹移転時に、装置を設置する建物として1925(大正14)年に完成した。現在は複数の子午儀を保管・展示する「子午儀資料館」になり、内部をガラス越しに見学できる。同館を含む見学コースの公開時間は10時~17時(入場は16時30分まで)。年末年始を除く毎日、無料。
3月23日は5年ぶりに「春の太陽塔望遠鏡特別公開」も行われる。「アインシュタイン塔」とも呼ばれる同施設は普段外部のみ見学できるが、当日は内部も公開され解説員が説明する。晴れていれば太陽スペクトルも見られる(15時ごろまで)。
電気通信大学の星間塵合成実験装置は、1970年代に在籍した坂田朗助教授らが手作業で組み上げた世界に1台しかない実験装置。終焉(しゅうえん)期の恒星が放つちり(個体塵粒子)をマイクロ波放電によるプラズマを用いて再現する。合成された物質は実験天文学の功績として世界で認められ、近年では新星の周りで生まれる有機物の特徴を持つ物質の合成にも成功した。赤外線宇宙望遠鏡や赤外線天文衛星「あかり」による星間塵研究につながり、日本のスペース赤外線天文学を支える役割を担っている。
同装置は2008(平成20)年から東京大学大学院理学系研究科天文学教室で、2023年からは同研究科付属天文学教育研究センターで、それぞれ使用・管理されている。同センターでの使用終了後は、所有者の電気通信大学UECコミュニケーションミュージアムで保管展示する予定。