
自由に本を交換できる「まちなか図書館」が8月1日、調布の柴崎駅の「開かずの踏切」北口脇に移動した。
「川の図書館」発起人の熊谷沙羅さん(前列左)と「まちなか図書館」管理人の嶋田理明さん(後列右) カフェエアーでのイベント時の様子
調布の多摩川河川敷で始まった「川の図書館」の分館として開設された同施設。「川の図書館」は、同市内在住の当時中学生だった熊谷沙羅さんと弟の大輔さんが2020年に開設した屋外の本交換所。アメリカで見た「little free library」の取り組みに着想を得て、コロナ禍で学校も図書館も閉鎖されたのをきっかけに開設した。本は返却不要で、寄付も自由。活動は本を通じて人と人とがつながる新たな地域交流の拠点となり、現在では全国約10カ所に展開している。
運用・管理は、敷地内にあるカフェ「cafe AiR(カフェエアー)」(調布市菊野台1)が担う。同店とのつながりは約2年前、同店で開催された市民活動紹介のトークイベントに熊谷さんを招いたのがきっかけ。活動に共感した店主の嶋田理明さんが、川の図書館を手伝うなどして交流が始まった。柴崎駅周辺には書店がなく、偶然の本との出合いや、本を手に取り選ぶ楽しさを得られる場が近所にも欲しいと思っていたという。熊谷さんが海外留学により活動を縮小する可能性があることを知り、分館として本の一部を預かる「まちなか図書館」を開設した。
当初は、近隣住民から譲り受けた本を、同店から徒歩6分の姉妹店に設置していたが、1カ月前に現在の場所に移動。駅前という立地の良さから活発に利用されるようになり、最初に用意した500冊はすぐに出払った。柴崎駅の踏切は「開かずの踏切」とも呼ばれ、長時間足止めされることも多く、そうした人たちが本を手に取る姿もよく見られるようになり、最近では寄付してくれる人も増え、移動後は約10倍になるほど活発な交換が行われている。
本のジャンルは問わず、子ども向けの本から専門書まで、さまざまな本が交換されている。返却期限はなく、自由に置いていくことも可能。利用時間も設けず、本の引き取り相談にも応じている。
嶋田さんは「通常の図書館と違い、その日によって本の顔ぶれが変わるのが面白い。不要な本を無駄にすることなく、地域で循環する場にしていきたい。最近は棚が空くことも多いので、不要な本があれば持ってきてほしい」と呼びかける。