特集

「調布を、わが家=アットホームと思えるまちにしたい」
――調布アットホーム・代表の石原靖之さん

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石原さん近影(コワーキングスペースmoon37にて)

小さくてもいい。地域のために1人が立ち上がる

--「調布アットホーム」設立のきっかけは何ですか?

2008年から1年間『多摩セカンドライフ大満足事典』という本の制作に編集長として携わる機会があり、定年退職してセカンドライフを送る50人くらいの方に取材をさせていただきました。趣味や旅行や生涯学習を楽しむ人。ボランティアに励んだりする人。中でも一番生き生きしていたのが「CB」をしていた人たちでした。自分たちで「CB」と定義していなくても多摩エリアにはそんな団体が多くありました。

一般市民がいきなり「ビジネス」といわれるとハードルが高いように思いますが、物事を持続・推進するためには資金が必要。高額でなくてもいいのです。たとえ数百円、数千円でもサービスを提供したら対価をもらう。サービスを受けたら対価を払う。対価をもらうからこそ、しっかりしたサービスを提供しないといけない。そうやって地域にあたたかいお金とサービスを回すことがこれからの社会に必要だと思ったのです。

多摩CBネットワークシンポジウムの様子CB」の最大の魅力は、頑張れば地域の人から「ありがとう」と言われることです。地域の問題が解決し、感謝され、少額ながら収入も得られる。やりがいや生きがいが感じられる上、自分の住む地域が良くなっていきます。多摩エリアで「CB」を推進する中間支援団体「多摩CBネットワーク」を取材で追いかけている内にすっかりはまって、いつの間にか自分が推進する側にまわっていました(笑)。調布でも「CB」の芽を普及させたいと2010年4月に調布市での「CB」普及推進の中間支援団体「調布アットホーム」を設立しました。

■気がついたら、アツイ会になっていました

――現在、調布アットホームが取り組んでいることを教えてください。

アットホームカフェの様子

毎月第1木曜日の夜に定例会「アットホームカフェ」を開催しています。見学自由で、会員・非会員を含めて参加者は常時30人前後。会員にはライターやデザイナーなどのクリエーターのほか、税理士・会計士・弁護士などの士業の方、IT系、企業経営者、主婦、シニアなどさまざまな方がいます。学生や、調布をはじめとする周辺地域の企業の方や金融機関の方が参加したりすることもあります。大体、前半の1時間はゲストスピーカーをお招きして「CB」に関連した話をしていただき、後半の1時間は参加者が自由に情報発信できる場にしています。5月には、会員を対象に「CB」の起業アイデアを競う「調布CBチャレンジコンペ2011」を自主開催しました。そこから「調布アイランド・プロジェクト」「Womanma Cafe(ウーマンマ・カフェ)」「大学生の就活支援」というアイデアが出てきて、現在、分科会やワーキンググループとして事業化の準備をしています。

第1回ワールドカフェ参加者

2カ月に1度のペースで、えんがわファンド支援事業として「ワールドカフェ@調布」も開催しています。テーマに沿って、地域のことを自由に語り合い、CBのネタやヒントを考える場です。今まで「調布の魅力を生かしたまちづくり」や「花火大会」、一般市民には関わるきっかけの少ない「福祉(福祉作業)」などについて専門家を招きながら語り合いました。語り合うことで多様な意見や新たな知識が得られ、いつの間にか当事者意識みたいなものが芽生えるのがワールドカフェの魅力です。このほか、ブログ講座やCB入門講座なども行っています。

■ビジネスじゃ成り立たない、CBだからこそ広がる世界がある

――「調布アイランドプロジェクト」について詳しく教えてください。

調布飛行場に降り立った第一便

調布市は調布飛行場を通じて伊豆諸島の大島(利島)、新島(式根島)、神津島に定期直行便を飛ばしています。市民の方でも知らない方がいらっしゃるのですが(笑)。このルートを使って、伊豆諸島の海産物や島野菜などを調布に運び込み、調布と島々をともに活性化しようというプロジェクトです。調布在住で大手旅行代理店を定年退職された方が懇親会で提案し、盛り上がり、プロジェクトチームが生まれました。多くの人から「素人には無理」といわれながらも、各島を回り、「物流だけじゃない。物流をベースに調布と島々の交流を深めたい。活性化に取り組みたい」と農業・漁業関係者を口説きました。 

現在、調布市内でプロジェクトに共鳴していただいている「四季彩 調風」「炉端 調風」「スタポン」「ビストロD’」「カベソン」「ダンダダン酒場」「和風厨房ばさら」などの飲食店に、新島と神津島の鮮魚や大島と新島の島野菜などを卸し始めました。

新島定置網によってあがった海鮮を試験的に提供

調布飛行場を経由した飛行機での島食材の供給は思わぬ効果も生みました。それまで島の農産物は主に船で時間をかけて竹芝へ運ばれていましたが、飛行機を使えば1時間足らずで運べます。それにより、今まで足が速くて流通しなかった青ムロアジなどの青魚や朝摘みのやわらかいアシタバの流通が可能となりました。朝、海を泳いでいた魚が、昼前には調布市内の飲食店に供給できる。物流を皮切りに生産者の方々や島の人たちの交流も始まりだしたのもうれしいですね。

利益重視の企業ビジネスでは、輸送手段・規模、漁獲量などの問題で恐らく成り立たないと思います。「調布や島々を活性化したい」という「CB」ならではの取り組みだからこそ成立し、島の方々や飲食店の方々の協力や応援が得られたのだと思います。

今後は、より多くの飲食店に協力していただき、調布を「伊豆諸島のおいしい鮮魚が食べられるまち」「伊豆諸島の空の玄関口」としてアピールしていきたいと考えています。

■市民と地域を結ぶ吸着剤になれたらいい

――ズバリ、石原さんの目指しているところを教えてください。

表現は変ですがふたを開けてみれば、「地域のために」と思っている人は想像以上に多かったというのが感想です。「調布アットホーム」を運営してみて、時間やマンパワーはもちろん、さまざまな分野でスキル、ノウハウを持っている方が想像以上に多いこともわかりました。「CB」の概念を普及させることで、地域に埋もれている「マンパワー」「スキル」「経験値」を顕在化していきたい。「人」と「人」、「アイデア」と「スキル」、「人」と「地域」を結び付けて、自分たちの住む地域のために立ち上がる人を増やしていきたい。これが目標です。

調布のまちは、元気な団体が多数あり、すでに活気あるまちだと思います。そこに今まで地域にコミットしてこなかった人たちの「思い」や「スキル」や「アイデア」や「マンパワー」を加える。「調布アットホーム」はまちを活性化させるそんな「吸着剤」のような存在になりたいと思っています。

調布飛行場経由「伊豆諸島の島食材が味わえる店」

modern Japanese スタボン調布バル・カベソン四季彩 調風炉端 調風和酒厨房 ばさら肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場

など。現在、協力店募集中。

■石原靖之さんプロフィル
1967(昭和42)年生まれ。調布市飛田給在住。「石原編集企画事務所」を経営。1998年に白血病を発病。2001年に再発、2002年に骨髄移植を受けて生還。2004年8月にマキノ出版から白血病闘病記「血液型が変わっちゃった!」を出版。現在、「調布アットホーム」代表、「多摩CBネットワーク」世話人、「多摩ソーシャル・ライターズ倶楽部」代表などを務めている。

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