5月12日に公開予定の「貞子3D」の大型宣伝幕が角川大映撮影所(調布市多摩川6)の壁面に完成した。真ん中から巨大な貞子の手が飛び出し、前の通りを走るバスの乗客や近隣の人の視線を集めている。中には通りがかりに足を止めて、携帯電話で撮影していく人や記念写真を撮る人も。宣伝幕は全国共通デザインだが、貞子の手が本当に飛び出しているのは調布だけ。撮影所前は、貞子の出現と常設の巨大大魔神により、隠れた調布の撮影スポットになりつつある。
飛び出す貞子の手を制作した社員の松元さん。貞子の手は大人の頭をすっぽり覆う大きさ
「貞子3D」は鈴木光司さんの小説をもとにした人気ホラー映画シリーズの最新書き下ろし版。今回の「貞子」は、「見た者はすべて死ぬ動画」がネット上で拡散し、テレビやスマートフォン、街頭ビジョンなどあらゆるところから迫ってくる。これまでの他の3D映画はどちらかといえば奥行きを強調するものが多かったが、今回は飛び出す貞子の迫力がよりリアルに仕上がっているという。
宣伝幕の巨大な手を制作したのは同撮影所の美術営業チームで、デザイナーもこなす松元玲子さん。「所長から宣伝幕の手を飛び出すように作ってほしいと指示があったが、特別な予算を組んでいなかったので、仕方なく自分で作ることにした。通常業務の合間を縫って作ったので3週間くらいかかった」と振り返る。「ホラー映画は怖くて見られない方だが、作っているときは平気だった」とも。学生時代に勉強したデザインの技術を生かし、ポスターイメージから立体の設計を起こして、横幅1.5メートルの貞子の手の立体作品を彫り、宣伝幕の真ん中に取り付けた。
「自信はなかったが、なかなかうまくできた。所長はもちろん、社内のほかの人の評価もよく、本社から増産できないかと引き合いがあったほど。でも、結果的に、この飛び出す手があるのは調布だけ」という。