特集

シリーズ【調布の老舗探訪】Vol.12
『4代続く深大寺そばの老舗』
-「松葉茶屋」3代目・石川和之さん

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松葉茶屋3代目の石川和之さんと息子の清生さん、渉生さん写真:松葉茶屋3代目の石川和之さんと息子の清生さん、渉生さん

調布市で最も有名なご当地グルメといえば「深大寺そば」。深大寺そば組合によれば、深大寺周辺には19店舗の深大寺そば店があるという。神代植物公園の深大寺門の近くにある松葉茶屋もその一つ。神代植物公園の開園のタイミングでこの地にそば店を構え、2021年に60周年を迎えた。

現在の松葉茶屋の外観写真:現在の松葉茶屋の外観

松葉茶屋3代目の石川和之さんは「(1961(昭和36)年に神代植物公園が開園し、この辺りが観光地化していった」と当時の様子を語る。石川さんの祖母は東京大空襲の後、深大寺に移り住んだが、当時住まわせてもらっていた寺の住職が「ここで売店を始めてもいいよ」と言ってくれたため、売店を開業した。当初はリヤカーを神代植物公園まで引いて販売しており、トランシーバーを使って店に注文を伝えていたという。

その後、調布市布田にあったサトウ食品から生そばを取り扱うようになり、松葉茶屋の前身となった。「壁もない、戸もない、吹きさらしの所で、どこにでも椅子を出してそばを出していたようだ」と石川さんは話す。

1990年代の松葉茶屋写真:1990年代の松葉茶屋

石川さんが店を継いでからは、独学でそば打ちを学び、手打ちそばに切り替えた。そばは、香りや味、色を大切にして、季節に合わせてそば粉を変え、毎日の天気予報を確認しながら、水分や仕込むそばの量を調整しながら、そばを打っている。

松葉茶屋では八割そばと十割そばを楽しむことができる写真:松葉茶屋では八割そばと十割そばを楽しむことができる

気温と湿度によってそばの出来具合が変わり、天気次第で客の入り具合も変わる。手打ちそばは打ったその日しか食べることができないので、日々の天気予報のチェックは何よりも重要。石川さんは4つの天気予報アプリを使いこなし、確認している。

こだわりのそば粉を使った手打ちそばが人気だという。写真:こだわりのそば粉を使った手打ちそばが人気だという。

現在は石川さんの息子2人も経営に加わり、メニューから店のロゴ、アプリ制作、ソーシャルメディアの運用まで行い、クレジットカードやPayPayなどのキャッシュレス決済にも対応している。

松葉茶屋には屋内・屋外に席があり、屋内席には樹齢推定200年のコナラの木が今も一部残る。店の天井を突き抜けて生えていたが、現在はご神木として残している。

松葉茶屋とともに歴史を刻むコナラ写真:松葉茶屋とともに歴史を刻むコナラ

屋外席にはたき火場があり、炎を眺めながらそば前やそばを楽しめるのが特徴。

屋外席でもたき火の温もりを感じながら食事ができる。写真:屋外席でもたき火の温もりを感じながら食事ができる。

2022年には「ミステリと言う勿(なか)れ」「ザ・トラベルナース」といった人気ドラマのロケ地にも使われて話題になった。「ミステリと言う勿れ」に登場した団子のセット「いろはセット」はもうないが、実際のドラマで使われた窓に貼られたメニューは今も一部残っている。

窓に貼られた「ところてん」「そばしるこ」のメニュー。ドラマで使われた小道具がそのまま残る写真:窓に貼られた「ところてん」「そばしるこ」のメニュー。ドラマで使われた小道具がそのまま残る

外の席では家族連れのほか、犬を連れた客の姿も多い。そばや甘味だけでなく、酒やおつまみも充実させ、アサヒビールの「うまい!樽生」認定店にもなっている。石川さんが目指しているのは、休日に自分が飲みに行きたいような店。深大寺の自然の中でそばを楽しみながら、どこかホッとできる居心地の良さがここにはある。

松葉茶屋
住所:〒182-0017 東京都調布市深大寺元町5-11-3
電話番号:042-485-2337
営業時間:10時~17時
定休日:月曜日

松葉茶屋ホームページ

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