調布・電通大が学内限定のワンセグ放送開始へ-携帯・スマホにキャンパス情報

エリアワンセグを研究する「エンジニアリングデザイン室」の学生

エリアワンセグを研究する「エンジニアリングデザイン室」の学生

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 電気通信大学(調布市調布ヶ丘)は、携帯端末向けの地上デジタル放送「ワンセグ」を使ったキャンパス放送を9月13日に始める。同大学が2010年から開発に取り組んできた狭い地域に限定した「エリアワンセグ」の本格放送で、すでに総務省から無線局(地上一般放送局)の免許も取得。学生、教職員合わせて約5900人を対象にした新たなコミュニティー・メディアが誕生する。

電通大キャンパス内に設置されたワンセグ基地局

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 同大のエリアワンセグ放送は、9月末から始まる東京国体の調布メーン会場「味の素スタジアム」でも実施が決まっており、情報・通信工学科の学生を中心にしたプロジェクトチーム「U.E.Cast」(ユニーク&エキサイティング・ブロードキャスト)は、学期末試験後も夏休み返上で本格放送に向け準備を進めている。

 エリアワンセグ放送は、地デジ放送の空きチャンネルを利用し、半径数百メートル程度の特定地域に限定して独自の映像やデータを配信するサービス。12年4月に制度化され、免許を取得すれば誰でも小規模エリアで商業放送に参入することが可能になった。携帯電話やスマートフォンのほか、ポータブルテレビ、ゲーム機などワンセグ受信可能な端末全てで利用できる。すでに各地で実証実験が進んでおり、スタジアムやイベント会場、駅、商店街、大学などのほか、観光、防災などの分野でも応用が期待されている。

 電通大キャンパスの受信エリアは、同大学東地区にあるコミュニティー広場横に設置された基地局アンテナから半径約100メートルの範囲で、学内の主だったエリアをカバー。地デジ対応の携帯やスマホがあれば、関係者以外でも映像や音声、データを受信できる。

 プロジェクトチームは、情報・通信工学科の3年生を中心に大学院生や4年生、2年生ら11人で構成。放送スタジオは、東3号棟7階にある研究室を使い、企画から取材、撮影まで全て学生の手で運営する。当初は番組素材が少ないため15分程度のコンパクトなテスト番組から始める予定だが、いずれは学生たちのキャンパスライフに欠かせない身近な話題や情報を提供したり、学生同士の交流などにも役立てたいとしている。また、災害時の緊急連絡ネットワークとしても活用する。放送は24時間サービスで番組内容は適時更新していく。

 学生を指導してきた情報・通信工学科の成見哲教授(43)は、日常的に学生たちがキャンパス情報を共有することで「学内のコミュニケーションが活発になってくれれば」と、ワンセグ放送開始に期待を寄せる。

 エリアワンセグ実用化に向けた電通大の技術検証、実証実験は、電気・通信の技術や専門性を身近な問題解決に生かす「エンジニアリングデザイン」の授業の一環として3年前に始まった。2011年8月には総務省の実験局免許を取得し、地元の調布市内で行われるイベントなどを中心に、通信機器メーカーや自治体の支援を受けながら活動してきた。

 プロジェクトは、地元の子ども向け映画祭や市内商店街とのジョイント企画、市民駅伝の実況放送など幅広い分野にわたっている。中でも昨年11月の市民祭と今年1月の市民駅伝で実施した、電気自動車(EV)を利用した移動式エリアワンセグ放送は、国内初の画期的な試みで、震災など緊急時に有効な通信手段として注目を集めた。

 チームリーダーの大学院修士課程1年の鈴木あやこさん(25)は「活動を通して技術と社会のつながりを強く感じた」と話し、「課題は山積みだが、みんなで楽しく進めていきたい」と本格放送に向け意欲を語った。

 実証実験段階から商業放送へ制度化されて約1年半。エリアワンセグの技術指導を担ってきた同大学OBで職員の峯水延浩さん(26)は、技術的には初期の目標は達成できたとした上で、「今後の課題は利用者のニーズにどう応えるかだ」と話す。

 電通大が、地域連携、地域活性化をテーマに開発に取り組んできたエリアワンセグは、本格放送に向け間もなく始動する。

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