稲城市の特産品である梨が旬を迎え、同市内に数ある梨園の直売所や調布市内の直売所で現在、「稲城」「幸水」などの梨が並び、旬の味を求める客でにぎわっている。
品川通り沿いで30年、梨を販売している「押伊園(おしいえん)」の直売所
稲城の梨作りの歴史は古く、江戸時代にまでさかのぼると言われる。主に矢野口から稲城長沼にかけた同市内には、現在約110軒の梨生産農家があり、梨畑に隣接して直売所を設ける農家も多く、もぎたての梨を販売するほか、梨狩りを行っている農園もある。シーズン中は、市外から梨狩りや購入に訪れる客も増え、にぎわいを見せている。
生産量が少ないため「幻の梨」と呼ばれる「稲城」は、早生(わせ)としては珍しい大玉品種。都内のみで生産され、その大きさはソフトボールサイズから大きいものは赤ちゃんの頭ほどもある。見た目のインパクトだけでなく、酸味が少なく多汁で糖度も高いため、知る人ぞ知る人気のブランド品種で、例年贈答用などに予約注文が殺到する。
「稲城」は市場に出回らない希少な品種で、農家から直接購入するほかに入手方法はほぼない。梨農家によると、今年は長雨の影響で、同梨の収穫は通年より1週間~10日ほど遅れたが、気温が戻ったため、徐々に糖度が増し8月20日過ぎから収穫が始まった。直売所では、9月15日ごろまで販売を予定している農園が多いという。
稲城・押立地区にある梨園「押伊園(おしいえん)」は、30年ほど前から、調布の品川通り沿いに直売所を出している。オーナーは「父の代から30年、毎年調布で直売している。『稲城』は、果汁が多くて甘みも強く、柔らかい食感が人気の梨」と話す。そのほか、市内では、旧甲州街道沿いの「矢小園」(上石原)などで販売中。