長野パラリンピック金メダリストで、国際パラリンピック委員会(IPC)・国際オリンピック委員会(IOC)の教育委員を務めるマセソン美季さんが6月5日、調布市立第三小学校(調布市上石原2)で講演を行い、全校児童と交流した。
マセソンさんは、パラリンピック教材「I'm POSSIBLE(アイムポッシブル)」の作成が評価され、IPCから日本人で初めて選ばれた教育委員の一人。20歳の時、交通事故で脊髄を損傷し、車いす生活となったが、その後出合ったパラスポーツ「アイススレッジスピードレース」の選手として、長野パラリンピックで金メダル3個、銀メダル1個を獲得した。現在はカナダに在住し、2児の母でもある。
体育館に集まった全校生徒を前に、「銀メダルに終わった100メートルは悔しかった。空き時間に昼寝をしたら金メダルを取る夢を見た。次の500メートルは、いつも通り自信を持って挑めた」と明かした。「金メダルを取った時、自信を持つことの大切さと、大きすぎる夢はないことが分かった。夢がかなうかどうかを決めているのは『自分』。言い訳をせずに失敗をたくさんしよう。失敗して成功する方が大ジャンプできる」など、自身の経験を踏まえた話に、児童らは聞き入った。
教材を使い事前学習をしていた児童からは、車いすやカナダでの生活、パラリンピックについてなど率直な質問が上がった。マセソンさんは問い掛けに丁寧に答え、「日常生活については、車いすだから困ることはない。試しに座ったままやってみてほしい」と話した。「階段など現実の段差に困ることもあるが、一番困るのは、車いすだから大変そうだとか、かわいそうだと決めつけられる心の段差。誰でも可能性は無限大」とも。
「東京2020パラリンピックの会場にぜひ応援に行ってほしい。みんなはエネルギーをあげられる存在。パラリンピアンは応援からパワーをもらえる。これから障がいを持つ人に出会うかもしれないが、特別ではなく普通の友達と同じように接してほしい」と締めくくった。
松山裕香さん(6年)は「体が不自由だったとしても、やれることが減るわけではないと分かった。自分も諦めないで何事にも挑戦したい」。井上心結さん(6年)は「車いすの人はできないことが多いと思っていたが、普通に生活ができ、できないことは私たちと変わらないと分かった。車いすだからと偏見を持ってはいけないと気が付いた」と話した。
「大人になったみんながこれからの社会を変えていく」というマセソンさんのメッセージを、児童らはしっかりと受け止めた。交流を終え、マセソンさんは「質問が途切れることなく、子どもたちの関心が高くてうれしかった。日本では、障がい者と接する機会が少ないため、幼い頃から刷り込まれる偏見もある。だからこそ今日のような学校での教育活動は重要だと感じた。パラリンピックは、子どもの感性を広げるチャンス。伝え方次第で、障がいに対する見方や捉え方が変わってくるはず」と話した。