美術作品に登場するさまざまな線に注目した展覧会「日本の美術を貫く 炎の筆<線>火焔土器からまゆ毛まで」が現在、府中市美術館(府中市浅間町1、TEL 03-5777-8600)で開催されている
府中市美術館「日本の美術を貫く 炎の筆<線>火焔土器からまゆ毛まで」
同館は2000(平成12)年10月に開館し、この秋20周年を迎えた。開館以来「生活と美」に基づく活動を続けてきた同館によると、今もっとも求められていることの一つは「美術鑑賞で得られる文化的な喜びや元気ではないか」という。今回の展覧会は「美術鑑賞の一番の醍醐味である画中の線を楽しんでもらい、作品からパワーを得ていただければ」と企画した。
展示作品は約130点。市内「本宿町遺跡」から出土した縄文土器「鉢」は、模様の中に「生きた線」が潜む。棟方志功の書「不生(ふしょう)」は、彼が心に感じた感銘がそのまま文字にぶつけられている。O Junさんの鉛筆画「挙兵図(『彼女の軍隊-小児の夢の仔』より)」は、眉毛のない軍服の青年たちが描かれ異様な空間を感じる。丸田恭子さんの油彩画「マイナスの質量」は、太古から未来へ連鎖する生命力の胎動のような「強い線」が表現されている。そのほか、市内「武蔵府中熊野神社古墳」から出土した大刀(だいとう)の銀象嵌(ぎんぞうがん)「鞘尻(さやじり)金具」、土田麦僊(つちだ ばくせん)の日本画「牽牛花(けんぎゅうか)」など、さまざまな分野から選ばれた。
学芸員の志賀秀孝さんは「日本の美術は素晴らしい『線』の表現で満ちあふれている。生命や喜びがあふれ出すような『線』、ほほ笑むような柔らかな『線』、清らかな緊張感のある『線』、音楽のように流れる『線』など、線を目でたどるだけで画家たちの熱気が伝わってくる。ご覧いただいた皆さんの元気ができる展覧会になれば」と話す。さらに「美術作品はもちろん、生活の中で見かけたあらゆるものに『生きた線』を見い出し、そこに込められた『気持ち』や『心』を感じることができたら、時間や場所の違いを超えて対象に『共感』することができるのではないだろうか」と提言している。
開館時間は10時~17時(入場は16時30分まで)。会期中の休館は、11月23日を除く月曜。観覧料(常設展を含む)は、一般=500円、高校生・大学生=250円、小学生・中学生=100円(府中市内の小中学生は「府中っ子学びのパスポート」提示で無料)、未就学児および障害者手帳などを持った人は無料。11月23日まで。