調布市ゆかりのサンドアーティスト保坂俊彦さんの作品「祈りの像」が現在、トリエ京王調布(調布市小島町2)C館の屋外広場「てつみち」に展示され、行き交う人の注目を集めている。
保坂俊彦さんは1974(昭和49)年秋田県生まれ。東京芸術大学美術学部彫刻科在学中から砂像を制作。国内外のイベントで作品を発表し、コンテスト受賞歴も多数。数少ない日本のプロ砂像彫刻家として、海外との交流事業に協力している。調布で10年間暮らし、現在は宮城県東松島市に移住し、地域おこし協力隊として活躍中。
調布市はパラリンピックを契機とした共生社会の実現を目指し、アートによる「多様性と調和」の可能性を進める取り組み「アート×共生社会」を行っている。その一環として8月12日、保坂さんが砂像を制作した。
砂像はサンドアートやサンドクラフトとも呼ばれ、砂と水だけで造られ芯材は入っていない。彫刻後に雨風や乾燥で砂が崩れるのを防ぐため、定着剤を吹きかけて表面を固める。保坂さんは「その場所の砂を使うことで、地域の人たちとの触れ合いを大切にしている」と話す。砂像の魅力については、「誰でも子どものころ砂遊びをしたように、身近にある砂でこんな作品ができることを見てもらいたい。根源的な物づくりの楽しさや感動は、年齢・性別・人種・国籍を問わないと思う」とも。
作品は高さ1メートルほどで、タイトルは「祈りの像」。ギリシャ神話に登場する「勝利の女神ニケ」をモチーフに、パラリンピックの成功と新型コロナウイルス感染症の収束への祈りが込められている。
展示場所が調布駅に近いため、通勤通学の多くの市民が目にしている。近くに勤務する女性は「顔や手の表情が温かく、心が落ち着くような穏やかな気持ちになった。繊細で美しい作品が砂でできていることに、はかなさも感じる。コロナ禍で緊張の日々だが、人が行き交う街中に出現した砂像アートは多くの人に希望を与えてくれるのでは」と話していた。
展示はパラリンピックが閉会する9月5日まで。