府中市郷土の森博物館(府中市南町6、TEL 042-368-7921)にある復元建物・旧府中町役場庁舎で現在、企画展「町役場の新築と大正時代の府中」が開催されている。
同館の敷地には、市内にあった江戸時代から昭和初期の建物8棟が移築・復元されている。旧府中町役場庁舎は1921(大正10)年に落成した木造2階建てで、多摩地域に現存する最古の役場建築。屋根の飾り天窓(ドーマー・ウィンドウ)や重りを内蔵した上げ下げ窓などを取り入れた洋風の2階建て建築だが、正面車寄せの屋根を和風の唐破風とし裏側には和風平屋の建物を付設している点が特徴。大正時代の建物としては東京都有形文化財の第1号に指定されている。
同展では、旧庁舎について「二度の落成式」「府中町役場の誕生と新築・移転」「新築当初の府中町役場」「発展を見据えた新築」「町役場庁舎の意匠」を紹介する。大正デモクラシーの中、一大事業として3年の歳月をかけて完成した建物を当時の町長は「この庁舎は府中町の発展の象徴」と述べ、モダンな町役場は街のシンボルになったという。併せて、大正時代の府中について、「待望の鉄道開通」「大型施設や学校の設立」「街の発展とアイデンティティー」という角度から、大きく変化していく姿を紹介する。
学芸員の花木知子さんは「復元建築という歴史を再現した場所で、庁舎新築の経緯や意図を知ってほしい」と話す。「開国から約半世紀を経て西洋文化が社会に浸透し、人々の生活や意識に変化が生まれた時代の府中を感じる機会になれば」とも。
開館時間は9時~17時(入場は16時まで)。月曜休館(月曜が祝日のときは翌日)。見学無料(博物館入場料が必要。一般=300円、中学生以下=150円、4歳未満・市内在住の小中学生・市内小中学校の通学者は「学びのパスポート」利用で無料)。2022年3月13日まで。