府中市制施行70周年記念「自然、生命、平和 私たちは見つめられている 吉田遠志(とおし)展」が現在、府中市美術館(府中市浅間町1、TEL 050-5541-8600)で開催されている。
吉田遠志は1911(明治44)年東京生まれの画家で版画家。父の博と母のふじをも画家。博の養父で、ふじをの実父である嘉三郎(かさぶろう)は中津藩(現大分県中津市)の御用絵師を務めた家に生まれた画家で教育者。芸術一家で育った遠志は父の元で日本の伝統木版画の技術を磨くと、木版画の実演と講習で欧米を巡遊した。取材先はアフリカや南極など世界各地に及び、特にアフリカでは野生動物を熱心に観察しライオンや象から生命を紡ぐ厳しさと尊さを得た。「人間も野生動物に学ぶべき」として「共存共栄」を願い、多くの野生動物と風景を木版や油彩で描いた。晩年には色鉛筆の色彩画で数百枚の原画を描き「動物絵本シリーズ」17巻を刊行し、国内外でさまざまな賞を受けた。1995(平成7)年に83歳で死去。
同展は、遠志の生涯を紹介しながら代表作約200点を展示する初めての回顧展。動物絵本シリーズの原画は週替わりで全点を公開している。学芸員の志賀秀孝さんは「遠志の作品には自然の力強さがある。絵の向こうの動物が現代の私たちを見つめ返してくるような強い視線を感じる。一人の画家が生命と共鳴し同調することで、美術作品の枠を超えた『平和への叫び』が聞こえてくる」と話す。
同館市民ギャラリーで8月27日から、関連展示「生命の森・夢見る動物たち展」も開催。パステル画家のくもざるさんが野生動物の雄姿に愛らしさを込めて描いた作品約100点を展示する。8月31日と9月1日にはエントランスホールで、くもざるさんが大きな紙に動物の絵を描くライブイベントを行う。いずれも観覧無料。
開館時間は10時~17時(最終入館は16時30分)。会期中は月曜休館。企画展観覧料(コレクション展を含む)は、一般=800円、高校生・大学生=400円、小学生・中学生=200円、未就学児と「府中っ子学びのパスポート」利用者は無料。いずれも9月6日まで。