市制施行70周年記念「アルフォンス・ミュシャ ふたつの世界」が9月21日、府中市美術館(府中市浅間町1、TEL 050-5541-8600)で始まる。
「目を閉じた少女」 キャンバス、油彩 堺 アルフォンス・ミュシャ館(大阪府堺市)
アルフォンス・ミュシャは19世紀末から20世紀にかけてフランスで活動したチェコ出身の画家。イラストレーター、グラフィックデザイナーとしても活躍し、多くのポスターや装飾パネルなどを制作した。草花に彩られた女神のような女性と波打つ曲線などアール・ヌーボーを代表する版画で知られ、現代の日本でも人気が高い。
同展ではパリ時代の華やかな版画と共に、パリを離れた後半生に打ち込んだ油彩画を展示。これまで別世界のように語られてきた両作品について、一つの視点から眺めてミュシャの強い個性と魅力を紹介する。
ミュシャのポスターは、クラシカルな伝統絵画に最新デザインを組み合わせた斬新さが特徴で、当時の欧州芸術界では象徴主義が広まり、ミュシャの神秘的な油彩画もその代表の一つ。「心の世界」を見つめる思想は、ミュシャの華やかな版画にも奥行きを与えているという。
会場には完成作品と素描や下絵を並べたコーナーも設置。両方を見比べることで、試行錯誤を兼ねて「ミュシャらしさ」を生み出した制作過程が分かるようにする。ミュシャが「自身の原点」と語る、画学生時代に初めて手がけた挿絵も貴重な下絵と併せて紹介する。
所蔵館以外では公開機会の少ない世界的コレクション「ハーモニー」と「クオ・ヴァディス」も展示する。同時開催のコレクション展では、ミュシャと日本近代洋画の意外なつながりにも触れる。
同館学芸員の音ゆみ子さんは「版画も油彩画も一目でミュシャと分かる強い個性が、その造形にあふれている。この造形が生み出す力こそ、私たちを引きつけてやまないミュシャの魅力の核心と言える」と話す。音さんの展覧会講座を10月26日、府中市生涯学習センター(同館から徒歩5分)で開く(無料、予約不要)。
開館時間は10時~17時(最終入館は16時30分)。会期中の休館は月曜(祝日の場合は翌日)と10月1日・8日。企画展観覧料(コレクション展を含む)は、一般=1,000円、高校生・大学生=500円、小学生・中学生=250円、未就学児と「府中っ子学びのパスポート」利用者は無料。10月12日~14日は「市民文化の日」で全員無料(混雑時は入場規制あり)。12月1日まで(一部の作品の展示替えあり)。