
府中市郷土の森博物館(府中市南町6、TEL 042-368-7921)の園内に移築されている旧河内家住宅で現在、復元建物展示「カイコとくらしたむかしの農家」が開催されている。
蚕を育てるための蚕棚(展示品)。緑の紙は桑の葉と蚕のイメージ
同建物は江戸時代に旧大沢村(三鷹市大沢)で創建したかやぶき農家で、1844年に浅間山(せんげんやま)近くの旧人見(ひとみ)村(府中市若松町)に移った。明治後期に大きな改造を行い、広間を区切って部屋にしている。さらに屋根の煙(けむり)出しや障子欄間(らんま)、すのこ天井、床下の炉を設けたことが分かっている。これらは養蚕に適した住宅にするためだった。
当時の日本は海外へ輸出する生糸の需要が高まり、蚕の繭が高値で取引されていた。府中でも養蚕が盛んになり、蚕の餌である桑の葉を育てる畑があちこちにあった。養蚕技術の発達にともない蚕を効率よく育てるために温度や湿度を適切に管理することが大切だと分かると、農家は蚕のために住宅を改造した。同館では旧河内家住宅を園内に移築するに当たり、創建当初の形ではなく、府中で養蚕が盛んだった頃の様子を知る手がかりになるよう養蚕用リフォームが行われた明治後期の姿で復元した。
同展では普段畳で見えない床下の炉を見学できるようにして、蚕のために工夫した住まいを解説する。蚕を育てる蚕棚も再現し、蚕と共に生活した明治から大正の暮らしについて紹介する。学芸員の荒一能さんは「実際の建物や養蚕の道具を見て、当時の農家がより多くの蚕を育てられるようリフォームしたことを知る機会になれば」と話す。「3月9日まで『梅まつり』を開催しているので、園内の梅を見ながら復元建物展示にも足を運んでほしい」とも。
開館時間は9時~17時(最終入館16時)。会期中の休館日は、3月10日・11日、17日、24日。見学は無料だが入館料が必要。一般=300円、中学生以下=150円、4歳未満と「学びのパスポート」利用者は無料。3月30日まで。