「『つげ義春と多摩川住宅/夜の公園遊具』~滝本淳助×木藤富士夫 ふたり写真展~」が11月29日・30日、多摩川住宅地内にある「はむね集会室」(調布市染地3)で開催される。
企画した野崎理人さん(左)とEmmaさん 同団地内で音楽教室「箱」を営みながら「ちくわぶ」のユニット名で音楽活動をする
調布市と狛江市にまたがる多摩川住宅は1968(昭和43)年、高度経済成長期の住宅需要に応える形で建設されたマンモス団地。商店街や学校、スポーツ施設などを備えた最先端の「モデル団地」として多くの見学者が訪れ、当時の皇太子殿下も視察されたほど注目を浴びた。現在、大規模な建て替えに伴う再開発プロジェクトが進行している。
同展は来年の60周年を前に「あのころに帰ろ、多摩川住宅」をテーマにした2人の写真家による写真展。同団地住民が立ち上げた「多摩川団地音頭復元プロジェクト」のメンバーの野崎理人さんとEmmaさんが企画し、2人の写真家に声をかけ実現。同団地の再生・地域活性化を目指し、2024年に設立されたまちづくり会社「まちづくりほとりと」が協力する。
舞台、コンサート写真や日常の何気ない風景を独自の視点で切り取った写真集「タキモトの世界」で知られる写真家・滝本淳助さんが45年前、同団地に住んでいた漫画家・つげ義春さん一家を撮影した写真を展示するほか、全国のデパートの屋上にあった「屋上遊園地」や各地の公園遊具を撮り続ける写真家・木藤富士夫さんが、多摩川住宅内の公園を被写体として2023年に発行した写真集「公園遊具」シリーズから作品をセレクトして展示する。団地内の公園は完成当時、棟ごとのテーマによって動物や昆虫などをモチーフにしたレトロで個性的なコンクリート製の遊具が数多く作られた。同展を企画した野崎さんは「建て替えで取り壊されてしまった遊具や、つげさんの写真をきっかけに、当時の多摩川住宅の雰囲気が伝われば」と話す。
関連イベントとして「団地のお部屋内覧ツアー」を開催。当時「ハ号棟」に住んでいたつげさんの部屋とほぼ同じ間取りの空き部屋も特別公開。現在は使われていないダストシュートの名残や天井配管がむき出しの風呂場など、60年前の面影が色濃く残る部屋を案内するほか、オリジナルグッズも販売。「死都調布」を描く漫画家・齋藤潤一郎さんの描き下ろしグッズや、調布限定のつげ義春グッズ、多摩川住宅オリジナル商品などを、同団地内にある「音楽教室 箱」で取り扱う。
Emmaさんは「公園遊具もそのまま残っている所もあるので、写真展を見終わった後は、実際に歩き回って空気を感じ、思いをはせてほしい。多摩川住宅に『住んでみたい』と興味を持ってもらえたらうれしい」と話す。
開催時間は11時~16時。入場無料。「お部屋内覧ツアー」は各日13時~、15時~(当日先着順)。