東京芸術劇場 コンサートホールは、オーケストラの公演会場としてよく知られていますが、その豊かな響きは室内楽やピアノ・リサイタルにも適しており、「リサイタル・シリーズ」を行ってきました。
2021年から、国内外で活躍するピアニストを迎えて、「リサイタル・シリーズ『VS』」をスタート。異なるスタイルを持つピアニストが、「デュオ(2台のピアノ)演奏」によって、熱狂的な空間を創造するリサイタル・シリーズです。
これまでに、ショパン国際ピアノコンクールで入賞し、音楽ファンを問わず話題を呼んでいる 反田恭平と小林愛実、若手ピアニストの亀井聖矢とイム・ユンチャン、務川慧悟とナターリア・ミルステインによるストラヴィンスキーの三大バレエ音楽など、異色のコラボレーションを実現することにより、注目を集めてきました。
5年目を迎えるリサイタル・シリーズ「VS」の記念すべきVol.10は、音楽ファンのみならず、世界中から熱い視線を集める異色のピアニスト 角野隼斗が満を持して登場します。そして、角野が今回共演者として熱望したのは、彼の師であり、フランスの大家 ジャン=マルク・ルイサダ。奇跡的に多忙なふたりの師弟共演が実現しました!全く異なる個性を持った師弟共演はどのような音楽を紡ぐのか、期待が高まります。
(C) Ryuya Amao
角野隼斗(ピアノ) 2018年、東京大学大学院在学中にピティナ特級グランプリ受賞。2021年、ショパン国際ピアノコンクールセミファイナリスト。これまでにシカゴ響、ウィーン放送響、ポーランド国立放送響、N響、読響など、国内外のオーケストラと多数共演。2024年、日本武道館で単独公演を開催し、ピアニストの史上最多動員13,000人を記録。ベルリン・フィルハーモニーをはじめ、世界でのリサイタルを成功させるなど、国際的な知名度を急速に高めている。2025年11月には、カーネギーホール大ホールでのソロリサイタルデビューも予定されている。"Cateen(かてぃん)"名義で活動するYouTubeは登録者数140万人超、再生回数は2億回を突破。2024年、Sony Classicalと契約を締結し、『Human Universe』 をリリース。現在、ニューヨーク在住。
公式ホームページ: https://hayatosum.com/
〈角野隼斗 コメント〉
ルイサダ先生と初めて会ったのは、パリに留学していた2018年のことでした。ある日サル・ガヴォーでのピアノリサイタルを見つけ、迷わずチケットを買いました。その時に演奏したモーツァルトとシューベルトは、当時パリで見たどんなものよりも美しかった。その後どうにかレッスンを受けられないかと思い、縁を辿って幸運にも実現しました。それから7年が経ちますが、今でも多くを学び続けています。先生の音楽はいつも真珠のようにキラキラとしていて、気品に満ちていて、少しのユーモアがあって、レッスンの度に溢れ出す音楽を必死で受け止めようとする時間は、私にとってかけがえのないものです。長年お世話になってきた先生と今回初めて共演できる喜びを、私は何と表現すれば良いでしょうか。「VS」という企画の名の下で先生の横に並んでしまうことはただ身のすくむ思いですが、それは一旦忘れて、音楽を楽しみたいと思います。
ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ)パリ音楽院などで学び、1985年のショパン国際コンクールで入賞して以来、傑出したピアニストとして活動している。デュトワやヤノフスキらが指揮するロンドン響、フランス国立菅、またモディリアーニ弦楽四重奏団などと共演し、カーネギーホールやウィグモアホールなどの主要ホールで演奏。国際音楽祭にも数多く招かれている。
録音も多く、ドイツ・グラモフォンとソニーから発売したショパンのワルツ、マズルカ、グラナドス『ゴイェスカス』などは評判を呼んだ。ラ・ドルチェ・ヴォルタ・レーベルからは最新盤『今夜は映画館で』をリリース。自らの人生を育んだ映画へのオマージュとなっている。
フランス共和国芸術文化勲章"オフィシエ"を受勲。
〈ジャン=マルク・ルイサダ コメント〉
クリスマス当日に開催する私たち2人のコンサートに向け、祝祭的で魔法のようなプログラムを考えました。このプログラムがコンサートに光と詩情をもたらしてくれることを願っています。
まずは、誰もがよく知っている“夜の音楽”で始めましょう。甘美で夢のようで、幕開けにふさわしい曲です。私が隼斗にラヴェルの『マ・メール・ロワ』やフォーレの『ドリー』のような夢幻的な曲を弾いてみないかと提案したのは、彼のタッチがどれほど幻想的で繊細かを知っているからです。それと同時に、個人的にとても思い入れがあり、また、隼斗にとっては比較的新しいレパートリーであるシューベルトとブラームスの曲を彼と共に弾けることを大変うれしく思っています。シューベルトの『ロザムンデ』は、優しく繊細で、クリスマス・
コンサートにぴったりだと思います。ブラームスからは、コンサートの祝祭的な雰囲気によく合う素晴らしいワルツを数曲選びました。チャイコフスキーは、もちろん『くるみ割り人形』から《花のワルツ》と《金平糖の踊り》をお届けします。クリスマスには欠かせませんから!
2人の個性に合った、とても私たちらしいプログラムとなりました。初めて弟子と一緒に演奏できることは私にとって大きな喜びですし、このまたとない機会を観客の皆さんと分かち合えることを大変喜ばしく思っています。