芸術財団「プラザ・ファンデーション」(調布市仙川町1)の東京アートオペラ実行委員会が11月12日から、第1回制作となる楽劇「トリスタンとイゾルデ」全3幕を都内各所で上演する。
バイロイト祝祭劇場と新国立劇場との共同研究に基づく楽劇演奏をコンスタントに行う同プロジェクト。19世紀の作曲家リヒャルト・ワーグナーの孫でバイロイト祝祭劇場総支配人を務めた故ヴォルフガング・ワーグナーさんと、リヒャルト・ワーグナー研究家の高辻知義さん(東京大学名誉教授)、演奏団体「ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム」の伊東乾さん(作曲家・指揮者)らの研究成果を実践、劇場空間全体を3次元的に活用する演奏方法「ダス・モニュメント・バイロイト」を実演する。
今公演の総監督を務める高辻さんによると「歌劇王として知られるリヒャルト・ワーグナーが『総合舞台芸術』として作品譜面のト書きに書き込んだ空間的な指定は、極めて重要な音楽上の指定を含んでいた。私たちの研究成果による演奏によって、ワーグナーが目指した音楽の空間的な実像が明らかになりつつある」という。同じく指揮と美術監督を務める伊東乾さんは「美術作品を置いただけの、客席と舞台の区別がない空間に、前後左右あらゆる方向から楽劇が響く。東京アートオペラならではの画期的な取り組みを体感してほしい」と語る。高辻さんの翻訳字幕付きで原語上演する。
同財団では、地元の若者たちに総合芸術であるオペラを身近に感じてもらいたいと格安シートも販売。床面にクッションを敷いて鑑賞する「ジーンズシート」を用意し、ワンコイン(高校生以下500円、一般学生1,000円)から鑑賞できる。理事の伊藤容子さんは「この金額でトッププロの楽劇を鑑賞できる機会は、世界的にも極めて珍しい。われわれは『若い観客を育てつつ、自らも育つプロジェクト』の一つとして、感性豊かな若い世代に最高の本物を体験してもらう取り組みをしていきたい」と意欲を見せる。
11月12日は14時から、仙川の東京アートミュージアムで地域還元公開リハーサル(入場無料)を行う。また、同日18時からは出演者と共に「ゲネプロ・レセプション」を開く(ワインパーティー参加費1,000円)。16日は15時から「東日本大震災復興支援チャリティオペラ」として、聖アンデレ主教座聖堂(港区芝公園3)で同楽劇全曲を演奏。参加費は3,000円。同30日と12月1日は14時から「ヴァーグナー生誕200周年オペラ・シンポジア」として、慶応義塾大学三田北館ホール(港区三田2)で同楽劇全曲の演奏と「バイロイト祝祭劇場・新国立劇場との共同プロジェクト・シンポジウム」を開催。参加費は各日5,000円。
出演者は池本和憲さん(トリスタン)、新藤昌子さんと三重野広美さん(イゾルデ)ほか。ピアノは小ノ澤幸穂さん、濱田裕子さん、守矢花梨さん。舞踏は加藤道行さん。
問い合わせはプラザ・ファンデーション(TEL 03-3308-8800)まで。チケットの販売はミュージアムショップTAM(仙川町1、TEL 03-3300-2568)または専用サイトから。ジーンズシート(学生格安席)の販売は、ミュージアムショップTAMの窓口のみ。購入時と入場時に学生書を提示する。