調布市柴崎駅近くに8月12日、活版印刷の体験、デザイン、文字をモチーフにした洋服などのアトリエ「服とタイポグラフ」(調布市菊野台1)がオープンした。
「服とタイポグラフ」店主の阿部粋己さん(左)アンさん(右)夫妻 後方が活字棚
活版印刷は、鉄でできたバラバラの活字を組み合わせて版を作り、インキを載せ圧力をかけて紙などに圧着する印刷手法。店主の阿部粋己さんの妻アンさんが、高校生の頃手に取った古い詩集の活版文字の凹凸、美しさ、インクむらなどの質感に魅了され、グラフィックデザインを学び仕事をしながら、活版印刷工から文字を組む組版技術を学んできた。近年、活版印刷所は需要の低迷や後継者不足などを理由に次々と廃業しているが、アナログなものづくりとして若いクリエーターなどの間で見直され、誰でも活版印刷が体験できる場をつくり、活版印刷の技術を伝承したいと、廃業した活版印刷所から活字を受け継ぎ、アトリエをオープンした。
オープン資金はクラウドファンディングを行い、目標を上回る支援が寄せられた。近隣に住む知人の支援が多いことを想定し、リターンにはアトリエを利用するプログラムを多く用意していたが、半数以上は知人ではなく、遠方からも支援が寄せられ、活版印刷名刺のリターンを追加で用意。活版印刷を伝承することは社会的な意味のあることだと改めて感じたと阿部さんは言う。
アトリエの1階には所蔵している全ての活字を並べ、テキンと呼ばれる活版印刷機を置き、活字を組んで印刷する活版組版ワークショップや、アトリエ利用チケットを購入して自由に活版印刷を行う作業スペースとした。2階には、パリと東京で服飾のデザインや縫製などを学んだ夫の阿部粋己さんが文字をモチーフにしてデザインした洋服や、活版印刷雑貨などのショールムとし、セミオーダーで受注販売している洋服の試着もできる。
ワークショップは週末を中心に開催し、好きな活字を拾って組版し、好きな紙とインキを選んで20枚程度印刷する。所用時間は2~3時間程度、参加費は5,000円(予約制)。
阿部さんは「組版を気軽に体験して、活版印刷の魅力を多くの方に知っていただきたい。このアトリエに来るために柴崎駅に降り立ったと言われるような場所になれば」と話す。
営業時間は13時~18時。月曜定休。