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調布・多摩川でアユの産卵がピーク 来年の遡上を左右するシーズンに

川底の石に産み付けられたアユの卵、目が見られまもなくふ化を迎える

川底の石に産み付けられたアユの卵、目が見られまもなくふ化を迎える

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 調布市を流れる多摩川の「二ヶ領上河原堰(にかりょうかみがわらぜき)」(調布市染地2)から狛江五本松前(狛江市猪方4)付近の流域で、アユの産卵がピークを迎えている。

多摩川、二ヶ領上河原堰(ぜき)下流付近で産卵の調査をする山埼充哲さん(右)ら

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 深刻な汚染によりかつては「死の川」と呼ばれたが、アユが遡上(そじょう)するまでに再生した多摩川。現在、遡上の鍵を握るアユの産卵シーズンを迎えている。川崎河川漁業協同組合総代で、飼えなくなったペットなどを受け入れる「おさかなポスト」の創設者・山崎充哲さんは「10月以降も高温で水温の低下が遅く、台風による増水もなかったことなどから、今年は産卵が遅れ小さい卵が多く、数もまだ少ない」と話す。

 回遊魚のアユは、海から川を上って夏場は上流で過ごし、秋になると川を下り、産卵に適した浅瀬に向かう。満月の大潮などに、母アユは川底の石や砂利に卵を産み付け、その後、ふ化した稚魚は3日ほどかけて海まで行き、河口付近の東京湾で大きくなる。

 東京都島しょ農林水産総合センターの発表によると、2018年に多摩川に遡上したアユは、推定994万尾。前年度の6倍以上で、調査開始以来最高を記録した2012年の約1194万尾に次ぐ2番目の多さだった。

 山埼さんは「遡上数の増減は自然の摂理で、前年の産卵数によって決まる。産卵数の変動は、天候や天敵、中州の工事など、要因は複合的に考えられるが、取水ぜきの多い多摩川の場合、上流のアユが、産卵時期に川を下れない魚道の問題が大きい。元気に川を上った大きなアユが、卵を産まないで死んでしまうと、下流域に数多くいる小さいアユのDNAが固定化される懸念もある」と話す。

 多摩川のアユは、正月を過ぎても産卵し、春の早い時期に遡上を始めるため、体長12~15センチメートルと小さいものが多いという。「寿命が一年のアユは毎年の産卵が勝負。カワウやサギなどの天敵もいる中、つながれた命を注意深く見守っていきたい」と山埼さん。アユの産卵・遡上観察会、講演会などの啓発活動を行いながら、時代と共に変化する多摩川を日々、見守り続けている。

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