6月23日、全日本大学駅伝の関東地区予選が開催された。本戦出場校が続々と決まる中、今大会予選免除の拓殖大学陸上競技部は、シーズン開幕を見据え、武蔵野の森公園など、調布市内で練習を重ねている。
3月末、退任した前岡田正裕監督(73)からたすきを受けた山下拓郎男子駅伝監督。静岡出身の35歳で、小学6年から陸上を始め、高校3年当時、亜細亜(アジア)大の指揮官だった岡田さんから熱心に誘われ同大学に進学した。箱根駅伝には4年連続出場し、2006(平成18)年に優勝を経験。卒業後、「富士通」で陸上競技を続ける中、拓殖大の監督となった恩師・岡田さんの誘いを受ける形で、2012(平成24)年、同陸上部のコーチとなった。
現在、山下監督は、西調布のクラブハウスで選手らと寝食を共にする。自ら希望して寮に入ったと言い、「生活を共にすることで、コーチ時代は見えなかった部分がよく見え、学生の理解につながっている。熊本にいる岡田さんには、練習メニューのアドバイスなどをもらっている」と話す。
掲げた今季のチームスローガンは「挑戦者」。強かった世代が抜けた穴を埋めるチーム力の底上げを目指す。昨年までの経験値がある、主将・赤﨑暁選手(4年)、石川佳樹選手(3年)、吉原遼太郎選手(同)などを中心に、けがから復帰した中井槙吾選手(4年)や、ケニア人留学生のラジニ・レメティキ選手(1年)などが注目だという。
山下監督は「選手を故障させることなく、1年をかけて育てていきたい。挑戦者の気持ちで、元気のいい選手を積極的に使いたい。年齢が近くなったことで、コンディションや練習メニューなど、選手は監督に相談しやすくなったと思う。互いのコミュニケーションが良くなり、チームが明るくなったと言われる」と笑顔を見せる。
最後に「実力者の4年生が卒業し、監督も替わった今年は、チーム力が落ちたのではと言われることもある。このままでは選手も自分も悔しいので、結果を出して評価してもらいたい。8月の夏合宿を乗り越え、シーズンが始まる秋以降に成果が出せるよう、コツコツと練習を積み重ねていく」と意気込みを語る。
毎朝4時、選手の練習コースを確認のため走る若き新監督は、名将と呼ばれた前監督の指導を継承しつつ、新しい風を吹き込んで、選手と共に来年の箱根入賞を目指している。