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直木賞作家・高村薫さん新刊 人気刑事シリーズ6作目、ゆかりの調布・府中舞台

直木賞作家の高村薫さん、7月9日西武鉄道の列車内で行われた「我らが少女A」刊行記念イベントにて(「高」ははしごだか)

直木賞作家の高村薫さん、7月9日西武鉄道の列車内で行われた「我らが少女A」刊行記念イベントにて(「高」ははしごだか)

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 直木賞作家・高村薫さんの人気刑事シリーズの最新作で、東京・武蔵野を舞台にした「我らが少女A」が7月20日、発売された(「高」ははしごだか)。

7月20日に発売された「我らが少女A」

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 シリーズ7年ぶり6作目となる同小説は、2017(平成29)年の東京・武蔵野が舞台。過去の未解決事件に再び向き合う刑事の物語は、野川、野川公園、西武線多磨駅など、調布・府中市民の生活圏である身近な場所で展開する。登場人物の目を通し描かれる野川などの景色や、実在するなじみの場所で起こるストーリーは、ファンならずとも市民目線で物語を楽しめる。

 著者の高村さんは、大阪生まれ、1990(平成2)年「黄金を抱いて翔べ」でデビュー。1993(平成5)年「マークスの山」で第109回直木賞のほか、数々の文学賞を受賞している。学生時代は、「国際基督教大学(ICU)」(三鷹市)で過ごしており、当時から野川やケヤキ並木など武蔵野の風景を愛し、「大阪の自宅に大きなケヤキの木を植えるほど、武蔵野への思いは強い」と言う。

 同作は映画化もされた「マークスの山」から始まる、刑事・合田雄一郎の人気シリーズ。シリーズには、「照柿」(1994年)、「レディ・ジョーカー」(1997年)、「太陽を曳く馬」(2009年)、「冷血」(2012年)がある。「合田は私である」と著者自らが言う通り、同シリーズでは、ファンも合田の視点を通じ、時代と人間を共に見つめてきた。犯罪と人間を描いた作品は、濃密な人間ドラマが核となっている。

 毎日新聞に2017年8月1日から2018(平成30)年7月まで連載された同作。連載時は、ブックデザイナーの故多田和博さん監修の下、24人の描き手が日替わりで挿画を担当するという、新しい試みの新聞連載としても反響を呼んだ。発売された書籍にも挿画は十数点収録され、「我らが少女A 挿画集」も刊行されている。

 新刊を手にした調布在住の読者は、シリーズ全作品を読んだと言い、「読み始めるといつもの散歩コースが登場する。物語の情景と現実がリンクして目に浮かぶよう。ずっと高村作品のファンだが、今回はいつも以上にワクワクしている」と話す。

 高村さんは「武蔵野はずっと私の憧れ。私にとって東京の一番は23区ではなく武蔵野だった。野川、はけ、湧水、ケヤキ並木など、この美しい風景がいつまでも残ればと思う。調布や府中のみなさんにも読んでいただければうれしい」と話す。

 価格は1,800円(税別)。

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