調布市仙川駅近くの伊藤農園(調布市仙川町1、TEL 080-4200-0852)の伊藤彰一さんが開発した個人農家向け栽培管理アプリ「AGRIHUB(アグリハブ)」のユーザーが1万人を超え、2月24日、JA(農業協同組合)と提携することで栽培管理データを共有できる「AGRIHUBクラウド」の全国販売を開始した。
仙川駅徒歩3分という立地で学校給食や近隣スーパーに野菜を納入するかたわら、農園の一部を「asobibatake(あそびばたけ)」と名付け、農業体験イベントなども実施している伊藤農園。小学生のころ将来農業用ロボットを作りたいと作文に書くなど、小さな頃から農家を継ぐことが頭にあったという伊藤彰一さんは、大学で電子工学を専攻し、卒業後はITベンチャー企業でシステムエンジニアとして活躍。その後就農し、父と一緒に農作物の栽培を行っている。
同園では年間約40品目を慣行栽培しているが、大都市近郊で少量多品目を栽培する農家にとって、野菜や害虫ごとに異なる農薬の管理は煩雑で、それらを手作業で調べ管理し、手書きで日誌をJAに提出しなければならない農業のIT化の遅れを目の当たりにしてスマホアプリの開発に着手。農作業の合間を使って約1年半をかけ完成させ、2018(平成30)年9月にリリースした。農作業を熟知した農家が作った個人農家向けアプリは口コミで人気が広がり、2021年1月、ユーザー数は1万人を超えた。
2020年には、革新的なアイデアや技術の成長を支援する「JAアクセラレータープログラム」に採択され、約3カ月かけて栃木県内のJAと農薬適正使用管理に関する業務改善のための実証実験を実施。これまで生産者が記録していた手書きの農業日誌をJA職員が手作業で検閲していたが、生産者がスマホアプリ「AGRIHUB」に入力したデータをJA職員がクラウド上で検閲することで業務時間を9割削減することが実証され、スマホアプリ「AGRIHUB」のデータを共有するシステム「AGRIHUBクラウド」として全国販売を開始。すでに都内のJAでの導入が決定した。
伊藤さんは「全国にアグリハブを普及させ栽培管理データを集約し、農業の基幹システムとなることで、農業DX(デジタルトランスフォーメーション)をけん引していきたい。生産者の皆さんにはアグリハブを使うことで手間のかかる事務作業の時間を省き、より農作業に集中できる環境を提供できたら」と話す。