地域と連携する新事業の実証実験として、アートスタジオ、再生プラスチックのアップサイクル、無料カフェが出店する「まちなかラボ 富士見BASE(ベース)」(調布市富士見町1)が6月1日、調布市立石原小学校近くにオープンした。
「まちなかラボ 富士見BASE(ベース)」の「みんぐるらんど」を主宰するユニットminglelingo(みんぐるりんご)の西村達也さんと愛子さん夫妻
全国的にも社会問題となっている空き家の課題解決を目的に調布市が取り組む「まちの『つながり』プロジェクト」の一環としてオープンした同施設。市内の富士見町エリアをモデル地域として2020年度から地域の生活と交流を促進する活動を行ってきた。これまで、空き家の利活用事例を紹介するトークイベントを開催して市と地域住民と専門家で意見交換などを実施。「新しいまちの価値」について考え、市では空き家の実態調査や利活用の意向確認を行ってきた。
3カ年計画の締めくくりとなる本年度は、空き家オーナーの協力を得て、地域と連携しながら持続的な収益を目指す「富士見チャレンジショップ」への出店者を募集。来年1月までの期間限定で、2階建て一軒家1階の2部屋を活用し、「新規性」「持続性」「地域活動との連携」を審査基準として事業者を選定した。結果、アートスタジオ「みんぐるらんど」とプラスチックごみのアップサイクル「pebbles(ペブルス)」の2業者が選ばれ、活動を始めた。
「みんぐるらんど」を主宰するユニット「minglelingo(みんぐるりんご)」は、絵本やイラストなどのアート作品の制作や、子ども向けのワークショップなどを行ってきた。自宅兼アトリエの一軒家を持ちたいと考えていたところ今回の募集を知り、その足がかりとして応募。子どもから大人まで参加できるワークショップの開催やアート作品の販売を行う。「pebbles(ペブルス)」は、プラスチック資源の回収ステーションとしての役割と、加工作業や販売を行う拠点として運営。オランダのデザイナーがプラスチックのアップサイクル方法を考案しノウハウを無料で公開するプロジェクト「プレシャスプラスチック」に興味を持った太田風美さんが手がける。
2部屋をつなぎ、フリースペースとなる2階への通り道には、誰でも利用できる無料カフェ「Our Living Room Cafe」を展開。孤立の解消を目指す中学生の熊谷大輔さんが、昨年から自宅で開いていた同活動を、場所を変えて運営する。7月10日には「富士見BASE」オープン記念イベントとして、ブロック塀を使ったウオールアートイベントや、プラスチックのシュレッダーマシンの展示・デモンストレーションなどを行う予定。
まちの「つながり」プロジェクトのプロデューサーで共立女子大学教授の高橋大輔さんは「この3年間で地域の空き家における利活用への興味関心は高まってきていると思う」と言い、同じくプロデューサーで建築家の菅原大輔さんは「期間終了時には、地域に良い循環ができ、2つの事業が利益を生み出していられたら」と話す。市の担当者は「この施設がモデルとなって市内の他の地域にも広げられたら」と期待を込める。
営業時間は14時~19時。金曜・日曜定休(営業時間・定休日は店によって異なる)。