調布の多摩川住宅で立ち上げられた「多摩川団地音頭復元プロジェクト」が現在、10月に開催する「団地まつり」に向け、数十年ぶりの団地音頭の復活を目指している。
つげ義春さんの「散歩の日々」に登場する「多摩川団地音頭」の1シーン ©つげ義春
調布市と狛江市にまたがる多摩川住宅は1964(昭和39)年に着工し、4年後に完成したマンモス団地。1967(昭和42)年に開催された第1回「団地まつり」に合わせて作られた「多摩川団地音頭」を、当時団地に住んでいて、現在、劇団「芸優座」代表を務める平塚仁郞さんが作詞し、アニメ「ハリスの旋風(かぜ)」の主題歌で知られる故・淡の圭一さんが作曲。音頭に合わせた振り付けの盆踊りが開催されていたが、次第に音頭が途絶え、数十年間、音源や楽譜の所在が不明のままとなっていた。
多摩川住宅内で音楽教室と喫茶「箱」を営みながら「ちくわぶ」のユニット名で音楽活動を続ける野崎理人さんとEmmaさんが団地音頭の存在を知り、復活を願っていたところ、今年1月に開催された「マンガ家・つげ義春と調布」展で、約50年以上市内に在住し、団地に居住していたことがあるつげさんの作品で「多摩川団地音頭」の様子が描かれた展示があったことを知る。コロナ禍で今年4年ぶりの開催となる「団地まつり」に合わせ、幻となった「団地音頭」を自分たちで復元できないかと、団地住民数人と「多摩川団地音頭復元プロジェクト」を立ち上げた。
展示を主催した同市立図書館が調査した結果、長年不明だった音源を発見。メンバーらは、その音源と採譜した楽譜を提供してもらい、野崎さんらが音楽活動を通じて知り合った音楽家たちの協力を得て再レコーディングを果たす。今回の復元プロジェクトのため、作詞した平塚さんが歌詞の一部を新たに書き直し、歌はEmmaさんと漫画家で歌手の山田参助さんが担当。「当時のゆったりとした空気感を再現するのが難しかった」と話す。当時の踊りの振り付けを、記憶頼りに再現し、数十年ぶりの団地音頭の復活を目指す。
メンバーの野崎さんは「祭りで踊る輪が年々小さくなってきた。当時踊られていた団地音頭の復活で輪が二重になってくれたらうれしい。当日の盆踊りには誰でも参加できるので、一緒に踊って盛り上がってほしい」と話す。祭りには団地住民以外に誰でも参加でき、事前に踊りの練習会を開く。
「多摩川ふるさと団地まつり」は10月7日10時~19時(多摩川団地音頭復活イベント=13時~、14時~、17時~)、多摩川住宅中央野球場で開催。踊り練習会は9月23日・30日の17時~19時、多摩川住宅「みんなの部屋」(調布市染地3)で開く。