国立天文台三鷹キャンパス(三鷹市大沢2、TEL 0422-34-3688)は4月から、ガイドが見学に同行して見学施設や展示機器について説明する「ガイドツアー」のコースを拡大した。併せて、今まで毎週火曜に行っていたツアーを休日にも開催してほしいという要望に応えて、第2・第4日曜も実施する。
物理学者で随筆家の寺田寅彦氏が書いたといわれる、「三鷹国際報時所」の門柱
新しくコースに加わったのは、文部省測地学委員会が1915(大正4)年に設置した「菱形基線(りょうけいきせん)」関係2カ所、1923(大正12)年に設置した「三鷹国際報時所」に関連する史跡4カ所、1924(大正14)年に設置した一等三角点「三鷹村」。
三鷹国際報時所は国際的な報時信号を受信し日本の時刻を保持していた機関で、現在の三鷹キャンパスの北西にあった。1948(昭和23)年に測地学委員会から東京天文台に移管されると、1970年代に建物が取り壊され門柱だけが残った。ツアーガイドではこの研究所のあった場所と、報時信号を受信した高い60メートル鉄塔の跡地3点を案内する。同鉄塔は1943(昭和18)年に調布飛行場から飛び立った軍用機が接触し、墜落炎上する事故があった。その後、1945(昭和20)年4月、同飛行場東側の高台に設置された高射砲の発射に邪魔だとして鉄塔は撤去された。
また、当時大陸移動説を唱(とな)えた物理学者・寺田寅彦が地殻変動調査のために設置した菱形基線も巡る。菱形基線とは、1辺100メートルの菱形の端にピラミッド型の覆いをした「基準標識」を埋めたもので、数年に一度地殻変動の測定を行っている。関東大震災で地殻変動が測定された研究報告もある。この基線を測定した「基線尺比較室の跡」も整備された。
一方、「三鷹村」と書かれた一等三角点は、関東大震災で日本の測地学上の経緯度原点(港区飯倉の東京天文台内にあった)が失われることを心配した参謀本部陸地測量部(国土地理院の前身)が三鷹に移転した東京天文台構内に設置したもの。平地にある一等三角点は珍しく、当時は高いやぐらが立っていたが、現在は標石とそれを囲む石が残る。
ガイドを担当する広報普及員の中桐正夫さんは「天文台とはもともと星の位置を調べて地図や暦を作る働きをしていた場所で、今回紹介する史跡はその歴史を語るもの。いずれも役割を終え竹やぶや地中に埋没していたが、過去の資料や写真を丹念に調べて発掘し案内できるように整備した。この地で行われた科学の役割と足跡を感じてほしい」と話す。
自由に見学をする「常時公開コース」は年末年始(12月28日~1月4日)を除く毎日。ガイドツアーは「登録有形文化財コース」=第1火曜、第2日曜13時30分~15時30分、「重要文化財・測地学関連史跡めぐりコース」=第3火曜、第4日曜13時30分~15時30分。雨天決行。無料。定員は各日20人で先着順。希望者は、実施日の前週月曜12時~木曜17時に、インターネット・ファクス・往復はがきで申し込む。問い合わせは国立天文台天文情報センター(TEL 0422-34-3688、平日9時~18時)まで。