調布の深大寺で2月17日、奉賛会やボランティアなど地元住民らが中心となって、境内にある亀島弁財天池の水を抜き、ヘドロなどを取り除く「かいぼり」が初めて行われた。
「かいぼり」は、池などの水を一時的に抜いて池底を露出させるという昔から日本各地で行われていた、ため池などを維持する手法。池底を干すことで水質の改善が期待されるほか、ごみの回収や外来生物の駆除など、生態系の改善に向けた対策にもなるため、近年、井の頭公園など都内の池では計画的に行われている。
武蔵野台地の国分寺崖線(がいせん)が近く、湧き水に恵まれた深大寺には、古くから水神信仰がある。山門前にある同寺の弁天池は、幅20メートル、長さ60メートル、水深1.5メートルと敷地内で最も広い。崖からの湧き水が流れ込み、かつてはスイレンが咲き、美しく澄んでいた同池は、高度経済成長期に周辺が宅地化されたことで雨水が浸透せず、湧き水は枯れ、生活排水が流れ込みヘドロがたまった。加えて、以前から池にいたニシキゴイの増加も濁りの大きな要因となって、水質は年々悪化していた。
同寺の檀家(だんか)世話人の齊藤亀三さん(70)は、仕事の合間に湧き水の復活作業を始め、「水草が見え、本来の魚が泳ぐ、かつての弁天池を復活させたい」と、仕上げとなる池の浄化作業を周囲に呼び掛けた。今月初旬から水を抜く作業が始まり、池からは都内でほとんど見られなくなった20センチ以上の「ドブガイ」の貝殻が2つ発見されたほか、30匹以上になるコイや、水草を食害し要注意外来生物に指定されている「ソウギョ」などが見つかったという。「コイや外来魚が見つかる一方で、メダカやモツゴ、タモロコなどの在来種も多く見つかっている」と環境調査の担当者。
市内の中学生・伊藤弦君(13)は「『池の水全部抜く大作戦』という番組をテレビで見たことがきっかけで、かいぼりに興味を持ち参加した。池の底から何が出てくるのかわくわくした。もともと生き物が好きなので、魚を見つけられて楽しかった」と泥まみれで話す。
同寺担当者によると、初めて行われた「かいぼり」には、約70人が参加。用意した1600袋の土のう袋では足りず、至急袋を追加するほどヘドロが出た。「池の水質改善につながるよう、数年以内にまた実施できれば」とも。