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調布の「不思議なレストラン」 心の病に笑顔と「らしさ」取り戻す居場所

日替わりランチ「玄米定食」。この日は、玄米ご飯、焼きコロッケ、きんぴらごぼう、マカロニサラダ、手作りのぬか漬け、みそ汁、寒天デザート

日替わりランチ「玄米定食」。この日は、玄米ご飯、焼きコロッケ、きんぴらごぼう、マカロニサラダ、手作りのぬか漬け、みそ汁、寒天デザート

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 「中高年の引きこもり」は約61万人、うつ病など精神疾患患者は約392万人と、心の病気が社会問題化する中、調布のNPO法人クッキングハウス会が運営する、心の病を持つ人が働くレストラン「クッキングハウス」(調布市布田1、TEL 042-488-6369)が、福祉関係者やメディアなどから注目されている。

レストランでメンバーと語り合う松浦幸子さん(左)、後ろは調理場となるキッチン

 NPO代表の松浦幸子さんが1987(昭和62)年に会を設立し、1992(平成4)年にオープンした同レストラン。メンバーと呼ぶ20~70代の統合失調症やうつ病など心を患った人と、スタッフ、ボランティアが力を合わせ働いている。現在62人いるメンバーは、メニューの考案、買い物、調理、接客など、好きな時間に自分ができる仕事をする。食事を食べるだけの人、店には来たが無理をしない人もいるという。

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 「閉じこもらずここにやって来れば、わずかだが基本給が出る。焦らずマイペースにできる仕事をする。仲間がいて、できることの喜びを感じる。生きがいが生まれ、患者さんは自分の居場所だと実感する」と松浦さん。心を患うメンバーとスタッフ、地域住民、客が交流するオープンなレストランは、地域に根差して親しまれ、27年になる。

 松浦さんは、息子の不登校がきっかけで、福祉の世界に飛び込んだ。弱者の立場になって考えたかったが、実習先の精神科病院では、鍵のかかった部屋に閉じ込められ、長期入院する患者と接する日々だった。「皆、暗い顔をしていた。心を病んだ上に、仕事や家族を失って絶望を感じ、薬では元気になれず、社会復帰できない患者が多かった」。この経験から、弱い立場の人が心豊かに地域の中で共に暮らせる社会を目指したいと考えるようになった。

 「食事はおいしく食べ、楽しく語り合うもの。生きていることを喜べるのが食事」との考えから、「おいしさ」を提供しながら、心を病む人が働いて社会と関われるレストランという居場所を作った。生きづらさを抱える人を、ありのまま受け入れる。病院でも家でもない、包容力のある場所で安心して働く。客や仲間と触れ合うことで自信をつけ、徐々に回復して社会復帰する人もいるという。市民にオープンにすることで、「偏見や差別がなくなれば」との思いもある。

 スタッフの田村さんが「ハプニングばかりで笑いの絶えない日常が楽しい」と話す横で、メンバーの一人が「減薬できたのはクッキングハウスのおかげ」と言う。「スタッフとメンバーは、互いに無くてはならない存在」と松浦さん。「心病む人と共に、この街で豊かに暮らす。安心して自分らしさを取り戻せる場所」とのメッセージを壁に掲げ、「弱い立場の人が幸せな社会は、本当の幸福な社会」を信念としている。

 メニューは日替わりランチが1種類(1,000円)。玄米ご飯、焼きコロッケ、きんぴらごぼう、マカロニサラダ、ぬか漬け、みそ汁に手作りの寒天デザートなど。無農薬野菜や天然調味料など、食材にこだわった家庭料理を日替わりで提供する。

 松浦さんは「私たちの活動は、地域の社会資源だと考えている。どのようにしたら心の病気が回復するのか、持っているノウハウを公開していくことが使命。心の病への理解を広げ、家族が孤立せず偏見がなくなるように、息の長い活動を続けていきたい」と話す。「サポートすることを苦労だと思ったことは一度もない。悩みながらも、共に笑い、食事をしたら、私が元気をもらえる」とも。

 明るい光が差し込む調布の「不思議なレストラン」に、今日も人々が集う。囲むテーブルの上には「おいしいご飯」が並び、レストランは温かい空気と笑顔であふれている。

 営業時間は11時30分~14時30分。土曜・日曜・祝日定休。

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