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調布の公立小学校がオンライン活用に奮闘 児童の「心理的距離」つなぎ留め

Zoomを使ったオンライン保護者会、終了時の5年生担任教員

Zoomを使ったオンライン保護者会、終了時の5年生担任教員

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 調布市立第三小学校(調布市上石原2)が、休校中の5月からオンライン朝会や動画配信を始め、6月22日・23日には、オンライン保護者会を開催するなど、独自の取り組みを行っている。

Zoomを使ったオンライン保護者会で3年生の学習について説明する担任教員

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 オンライン活用が遅れているともいわれる公立学校だが、同校は休校が長期にわたる中、「課題に向き合い、学校が変化に対応できるかどうか」を教員で話し合い、「公立小学校もやれることはやろう」と、オンラインの積極的活用を決めた。入学や進級後、先生や友達と会えず不安を抱える子どもや、家庭で子どもを見る保護者の心配に対応するため、市教育委員会の環境整備後、オンライン朝会を6年生から試験的に開始。最終的に全ての学年で実施した。

 同校の黒木美穂副校長は「Zoom(ズーム)を使った朝の会は、8割強の児童が参加できた。不参加だった児童は、担任が電話でフォローした。回数を重ねると参加数も増えた。全員が参加できないからやらないのではなく、できることを探して事情のある子はフォローする。朝会で担任がやっとクラスの子どもと話すことができ、本当にうれしそうだった」と振り返る。

 黒木副校長は「新型コロナの感染防止対策は、ソーシャルディスタンスなど物理的な距離を取らなければならない。休校が長引けば、児童のメンタル部分のサポートは必須で、心理的距離を近づけるために何かやらなければと考えた。オンラインの活用は必然だった」と話す。

 新年度の保護者会は4月に実施できず、資料を配布するのみの対応で考えていたが、辻久恵校長は「担任の人となりを保護者の皆さんに伝えたい。各担任が直接、保護者と話す機会を持ちたい」と、オンラインで開催。予定時間をオーバーし、途中で切れてしまうハプニングもあったが、臨機応変に対応できたという。

 課題を配布するだけでなく、体育や音楽などは、教員が自作した動画を配信したほか、同校のマスコット「三小ケヤッキー」が学校をリポートするなど創意工夫し、「先生に会える」「学校とつながっている」と、児童や保護者に評判だった。

 クラスが2分された分散登校の期間、「久しぶりの学校は楽しかったけれどつまらない」と、低学年児童から本音が聞こえたという。「休校は学習面の遅れだけでなく、距離を取ることで生じる孤独や寂しさ、また変化そのものが子どもに与える影響が大きいのでは。オンラインを活用して『離れているけれどつながって、見ているよ』と伝えることが大切」とも。

 6月15日、全児童そろっての通常登校が始まり、校内には子どもたちの元気な声が戻ってきた。感染防止対策を取り入れた新しい学校様式の下、さまざまな制限はあるが、「子どもたちのいる学校は命を吹き返したよう」と教員らは笑顔を見せる。

 コロナ禍をきっかけに、公立小学校にも変化が見え始めた。地域・学校差はあれ、教員・保護者・地域の人など、学校に関わる大人の知恵と努力で変化に対応しようと試行錯誤している。「PTAのサポートや地域ボランティアのお手伝いも有り難い。学校に関わる全ての人が子どもたちを守っているように感じる。コロナ時代は、教員の世界も変わるかもしれない」とも。

 黒木副校長は「教員同士が助け合いながらやれることはやっていこうと、前向きにオンラインの活用を進めている。学校が再開した今、コロナの第2波・3波に備える意味でも、『オンライン』と『オフライン=現場(学校)』を、交互にうまく使っていける体制をつくれれば」と話す。

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