7月28日・29日にシビウ国際演劇祭2021招聘(しょうへい)作品「砂女」を調布市せんがわ劇場(調布市仙川町1)で国内プレ公演する劇団「うずめ劇場」が、クラウドファンディングを始める。
第35回公演に当たる同作品は、仙川駅近くで暮らしていた安部公房の小説「砂の女」が原作。日本の原風景を想起させる閉塞(へいそく)的な共同体に迷い込んだ男が、砂と生きる女に徐々に絡め取られ、現代社会人としてのプライドや常識を失っていく物語。同劇団主宰のペーター・ゲスナーさんが哲学的な分析で構成・演出し、現代社会人の存在の危うさや滑稽さを皮肉と共に立体的に描き出す。
作品について、ゲスナーさんは「世の中はどんどんパーフェクトを求め、誰もが正しいことを正確に知っているように見える。それなのに、人々は…特に都会に住む人たちは、孤独になったり落ち込んだりする。砂の女の存在は、見る人に狂気を感じさせるだろう。この古風な表現の中から、現代ではほとんど知ることのできない独創的な生命力が生まれてくるはず」と話す。
同作品は、8月にルーマニアで開催されるシビウ国際演劇祭に招待されている。同演劇祭は世界70カ所以上の国や地域から約350団体が参加する世界最大規模のパフォーミングアーツフェスティバルで、フランスの「アヴィニョン演劇祭」、イギリスの「エディンバラ国際フェスティバル」と並ぶヨーロッパ三大演劇祭。
国内プレ公演は非常事態宣言の影響により座席数を減らしたため、チケットは完売しキャンセル待ちを受け付けている。昨年からのコロナ禍により活動が苦しい中、さらに見込んでいたチケット収入が減り、劇団はクラウドファンディングで協力を募ることにした。支援者には、プレ公演の映像が見られる謝礼を用意している。
劇団員の松尾容子さんは「稽古は佳境に入り、皆さんの前で上演できることが今から楽しみ」と話す。「一方で、新型コロナの影響で経済的に非常に苦しい状態が続いている。ぜひ皆様の支援をお願いできればありがたい」と呼び掛けている。