食用キノコがおいしい秋が到来し、食卓にはいろいろなキノコが並ぶが、調布、三鷹、小金井にまたがる都立野川公園(調布市野水)、都立浅間山公園(府中市)を散策すると野生のキノコに出合う。
都立公園に生えていた毒キノコの「シロハツモドキ」(左上)、色鮮やかな「ヒイロタケ」(右上)、「カイガラタケの仲間」(左下)と「キクラゲの仲間」
山林に生えると思われがちなキノコだが、主に梅雨の時期や秋になると身近な公園や道端でも見つかる。林野庁によると、日本には4000~5000種類のキノコが存在するが、名が付いていないキノコも多く、正確な数は把握できていないという。このうち食用とされるキノコは約100種類で、大半のキノコは食毒が不明。例年、秋のキノコ狩りシーズンには毒キノコによる中毒がニュースになっている。
武蔵野エリアの都立8公園を管理する西武・武蔵野パートナーズ、パークレンジャーチーフの金本敦志さんによると、野生のキノコが生える条件は、湿度、朝晩の寒暖差があることに加え、キノコが生える基になる植物や生きものがいることだという。そのため、梅雨時や季節の変わり目がキノコのシーズンとなる。
倒木や枯れ枝・落ち葉のほか、ツバキの花、動物のふん、ドングリにしか生えないキノコやセミ・トンボ・バッタなど虫に付くキノコなど、キノコは相手や場所を選んで生え、一晩から数週間という短い生涯を終える。生き物が多ければ多いほど、その場所のキノコの種類は増えるという。
同園に生えていた「オオシロカラカサダケ(シロハツモドキ)」は毒キノコ。そのほか、「きのこ染め」の原料として使われる「ヒイロタケ」、「カイガラタケ」、「キクラゲ」、「ホコリタケ」などが見られた。
ホコリタケは、物理的衝撃を受けると胞子を飛ばすキノコ。踏まれるなどしてショックを受けると、頭部の中央に空いた穴から白い煙のように胞子が飛び出す。金本さんは、指でホコリタケをつまみながら、「踏まれるとかわいそうに感じるかもしれないが、胞子を飛ばすことがキノコの最大の狙い。生育期間の短いキノコは、その間にいかに繁殖できるかチャンスを狙っている」と話す。
「キノコが生えている木は、弱っている木でそのうち枯れてしまう。キノコは森の掃除屋として枯れた木や生きものの死骸などを朽ちさせ、土に返す仕事をする自然に欠かせない存在」とも。現在、調布周辺の都立公園ではいろいろなキノコに出合えるが、金本さんは、「自然に詳しい人でもキノコを確実に見分けることは難しい。自己判断で公園のキノコをとって食べることは禁物。公園の生き物は観察するだけにして、触ってもいいが必ず手洗いをしてほしい」と話す。