調布市つつじヶ丘駅近くの印刷会社「内田平和堂」(調布市東つつじヶ丘1、TEL 03-3300-7301)が10月1日、100周年を迎えた。
「内田平和堂」で販売するレトロ商品の数々 保管していた昭和初期の木版印刷の試し刷りから、布バックやTシャツなどを製作
1923(大正12)年の関東大震災後、木版で紙袋へ印刷する事業で始まった同社。木版印刷、活版印刷、オフセット印刷、デジタル印刷、UV印刷と、印刷技術の発展は著しく、都度、新しい技術を導入し、事業も進化させてきた。「フルカラーのオフセット印刷機を導入した時はわくわくドキドキした」と、技術革新の場面にも立ち会ってきた3代目社長の内田眞一さん。印刷工の勘に頼っていたインキの色出しを自動で設定することができ、「品質が飛躍的に向上した」と印刷技術の進化を振り返る。
内田さんは子どもの頃から両親が休みなく夜遅くまで働く姿を見て家業を手伝うようになり、運転免許を取得してからは配達要員として活躍してきた。新技術の導入に加え、インターネットなどデジタル化への対応にも携わり、2015(平成27)年に社長に就任。得意先だった「富士食品工業」(現シダックス)が事業を拡大し、その対応に追われるように技術を発展させてきた結果、他の印刷企業よりも早くデジタル化を進められたという。シダックスの社員向けマーケティング勉強会や志太社長主催の経営に関する勉強会にも参加するなど企業経営について学ぶ機会を提供してもらい、「シダックス会長兼社長の志太勤一さんとの付き合いが経営者としての転機だった」と内田さんはいう。
かつては甲州街道だった通り沿いで営業を続け、地域貢献にも重きを置く同社。創業者で祖父の内田忠作さんは長年民生委員を務め、父の武さんは長年の保護司活動が認められ藍綬褒章を受賞。眞一さんは先祖代々が守ってきたこの地域を引き続き守り、地元・つつじヶ丘商店会の活性化にも注力して、さまざまな業態とのコラボレーションなども進めている。
これからの会社のあり方について、眞一さんは「持続可能な社会への貢献にも注力し、使い捨ての印刷物から、残るものへの印刷へのシフトを目指す。かつての技術と最新技術をかけ合わせた商品や余剰紙を使った商品の開発や、ものづくりや物の価値を考えてもらう体験なども提供していきたい」と話す。