調布市の研究推進校である調布市立第六中学校(調布市国領3)の研究テーマ「まなびの森」プロジェクトが4月からスタートした。
「まなびの森」構想は昨年、同校に赴任した佐伯あつ子校長が念願していたもので、学校内に創造的な環境を整え、授業を変え、温かい学級や人間関係の構築に努めるなどさまざまなアプローチで「生徒に仲間と協力して主体的に課題に立ち向かう力を育てたい」という教育ビジョンを実現するもの。実施期間は2024年度から2年間。
構想の基盤にあるのは人権・道徳教育、インクルーシブ教育を重視する人権尊重の精神。佐伯校長は「創造的な空間で多様性が尊重され誰もが大切にされる環境でこそ、子どもの想像力と勇気は湧き上がる。教員には生徒の多様な学びを保障して、仲間と協働する喜びを大切にした生徒の未来につながる授業を展開してほしい」と話す。
プロジェクトの拠点となる創造的空間「MORI」は、木目の床板と腰壁のある、明るい森をイメージした木のぬくもりが感じられる空間。MORIはできるだけ開放して、生徒は授業のほか、休み時間や部活動、放課後などに使えるという。使われていなかったグランドピアノも置いて、「ストリートピアノのように誰でも演奏ができ、ピアノの周りには切り株の椅子を並べたい。この拠点は生徒、教師、地域の人を含めた学び合いの空間にしていきたい」と佐伯校長。
同プロジェクトは3分野で構成され、教員は必ずどこかに所属するという。「ICTや教室以外の空間も生かした授業づくり」「多様性を重視したUD(ユニバーサルデザイン)化や言語環境を含む環境づくり」「温かな学級を基盤とした学び合う関係性づくり」。同校は「これら3つが重なり合って豊かな森が形づくられ、学校は森のように息づき、拠点だけでなく学校全体が『まなびの森』となっていければ」と期待する。
プロジェクトリーダーの一人で数学科の高橋さんは「公立中学校でこれほど大きな研究テーマは聞いたことがない。既に教員同士で何ができるか話し合っているが、とても楽しく教師としての学びも多い。ワクワクしている」と笑顔で話す。
佐伯校長は「探究という言葉には失敗が含まれる。『こういう授業をやってみた』でいいから、自由にアイデアを出し、先生同士で話し合いながら進めてほしい。教師の役割は子どもに共感し、子どもの可能性を引き出すこと。学校でさまざまな仕掛けをつくって生徒の学びを後押ししたい。これは生徒のためだが、先生たちが学び合える、教師として生きていく上で力になるプロジェクトでもある」と話す。さらに、「『まなびの森』と名付けたのは、森は生物多様性や共生社会の象徴で、植物はもちろん菌類、虫や鳥、動物など多様な生物が共存している。生徒にはここで成長して、他者や自然と共存、共生ができる人になってほしい」とも。