桐朋学園芸術短期大学(調布市若葉町1)演劇専攻科教授でドイツ人演出家のペーター・ゲスナーさん率いる劇団「うずめ劇場」が現在、ルーマニアで8月に開催される「シビウ国際演劇祭2021」に向け稽古に励んでいる。
同劇団は2020年に同演劇祭の招待を受けたが、3月に新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックにより上演延期に。4月に緊急事態宣言が発出され国内での公演も難しくなると、劇団としてできる文化活動を考え「コロナ転び八起き」プロジェクトを立ち上げた。10月には「アートにエールを!東京プロジェクト」の助成を受け「氷の下」(作=ファルク・リヒター)の国内初公演を成功させた。ゲスナーさんは「演劇をすること、演劇を見ることは社会生活に参加することを意味する。コロナの時代こそ、人間の素晴らしさ、奇妙さ、愛らしさを感じる場所が必要」と話す。
今年、同演劇祭の開催が決まると、再度招待され「砂女」を上演する。渡航前の7月28日・29日、調布市せんがわ劇場で国内プレ公演を行う。原作は安部公房の「砂の女」で、ゲスナーさんが構成・演出、同劇団が台本を担当した。2014(平成26)年に下北沢ザ・スズナリ(世田谷区)で初演し、連日満員になった。
安部公房は35歳の1959(昭和34)年、若葉町1丁目に自宅を建て同作品もここで執筆した。やがて演劇活動に高い関心を持ち、現在ゲスナーさんが勤める同大短期大学部で芸術科演劇コース(当時)を立ち上げ、自ら教授として演劇論を指導した。ゲスナーさんは「彼が在籍したからこそ、私はここで長く演劇の授業を続けている。私と同年代のヨーロッパの人たちは、彼をとても尊敬している。彼と同じ椅子に座れることは誇りであり、これからもベストを尽くしたい」と話す。「この地で最も有名な同胞の博物館を建設するか、少なくとも記念碑を建ててほしいと強く願う」とも。
劇団員の松尾容子さんは「稽古から公演までしっかり感染予防をして、会場もコロナ対策を徹底するので足を運んでほしい。演技・映像・音楽が交じり合う素晴らしい舞台を鑑賞していただければ」と呼び掛ける。ゲスナーさんも「劇場で生のパフォーマンスを見ることは、きっと特別な幸福感を得てもらえるはず」とも。
開演は、28日=13時・19時、29日=13時。上演時間は130分。チケット料金は、前売り=一般4,500円・学生3,000円、当日=5,000円。うずめ劇場ホームページ・カンフェティチケットサイトで販売する。