プレスリリース

【2025年4月・10月育児・介護休業法改正 法人の対応状況と課題に関する調査】

リリース発行企業:株式会社Works Human Intelligence

情報提供:

株式会社Works Human Intelligenceは、統合人事システム「COMPANY」のユーザーである大手法人を対象に、2025年4月、10月に段階的に施行される育児・介護休業法改正に関する調査を実施し、72法人から回答や生の声が得られたので結果をお知らせします(調査期間:2025年1月27日~2月28日)。



---------------------------------------調査結果のポイント---------------------------------------
- 77.8%の大手法人で 10月に義務化する「柔軟な働き方を実現するための措置」の2つ以上を実施済み
- 措置別にみると、「始業時刻等の変更」や「短時間勤務制度」の導入が進んでいる。一方、法改正をきっかけに「就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇」を取り入れる傾向がみられる
- 大手法人が感じる課題は「従業員間の公平性」(34.7%)が最多
- 37.5%の大手法人が、「法改正を機に育児中以外の従業員も利用できる制度や施策を検討した」、または「今後検討していく」と回答
- 87.5%の大手法人が、育児中の従業員の満足度を上げるために最も重要なのが「制度を利用できる職場環境」と回答


-------------------解説のポイント( WHI総研・社会保険労務士 井上翔平)-------------------
育児を行う社員、行わない社員双方に配慮した制度、職場環境作りを。

本調査実施の背景
男女ともに仕事と育児・介護を両立できる状態を目指して、改正育児・介護休業法が2025年4月1日から段階的に施行されます。具体的には、4月からは子の看護休暇を取得できる子の年齢や事由の拡大、残業免除対象の拡大、労使協定による介護休暇を取得できる労働者の除外要件の見直しが事業主に求められます。
10月からは、「育児期の柔軟な働き方を実現するための措置」として、事業主は3歳から小学校就学前の子を養育する労働者に関して、以下5つの措置の中から2つ以上を選択して講ずる必要があります。
- 始業時刻等の変更
- テレワーク等(10日以上/月)
- 保育施設の設置運営等
- 就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年)
- 短時間勤務制度

今回、特に注目度が高い10月に義務化される「柔軟な働き方を実現するための措置」に着目しました。
法人はこの措置を実現するための費用、業務への影響、従業員の要望等様々な観点で選択する必要があります。本調査では、法改正を目前にした大手法人がどのような措置を実施予定で、措置を実施するうえでどのような課題があるのかを調査しました。また、仕事と育児の両立や、子どもの有無に関係なく誰もが快適に働ける環境を実現するために必要な要素についても考察します。

調査結果
1. 77.8%※の大手法人で、2025年10月に義務化予定の「柔軟な働き方を実現するための措置」の2つ以上を実施済み。
2. 措置別にみると、すでに「始業時刻等の変更」や「短時間勤務制度」の導入が進んでいる。一方、法改正をきっかけに「就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇」を取り入れる傾向がみられる。



※「柔軟な働き方を実現するための措置」の今後の実施予定を問う設問で2つ以上「すでに同等の措置を実施ししている」を選択した法人を集計

3. 大手法人が感じている課題は『従業員間の公平性』(34.7%)が最多
34.7%※の法人から、課題として『従業員間の公平性』に関する声が寄せられました。主に2つの観点からの公平性を懸念している様子がうかがえます。
1)所属する部門やはたらく場所の違う従業員間の公平性
「テレワークの場合、措置を職種で分けて実施することになるので社員間で不公平感が生まれてしまう」(サービス業)
「全職種に対して実施しているが、製造現場の社員への適応は現実的に難しい(交替勤務や人員不足)」(製造業)
「職種や地域によっては対応可能な措置が限られてしまうため格差があるほか、短時間勤務者やテレワークの比率が高まってしまい、事業運営(特に店舗営業)に支障が出る可能性がある。」(不動産業)
「事務職は比較的柔軟な働き方の実現ハードルが低めで問題ないと見ていますが、現場職、特に運転士はただでさえ人員不足が課題になっている上に公共交通機関を担う役目がある以上、多様な制度をよく考えて設けないと代替人員の確保は非常に難しいと考えます。これらの職種間で不公平感が生まれてしまう懸念があります。」(運送業)

2)子どものいる従業員といない従業員間の公平性
「どこの部署も人手不足の為、「休まれると困る・業務に支障がでる」という声もあがると思う。そこに対してどうフォローするのか対策しないと育児中以外の方から反発の声があがり、結果逆に育児中の方が働きづらくなるのではないかと思う。」
「子育て世代に手厚くなる一方、独身者や様々な事情で子供を持たない・持てない社員との格差が広がるように感じている」

※「柔軟な働き方を実現するための措置」を実施する上での課題や懸念を問う設問に対し、「不公平感」という言葉が含まれる回答や、「不公平感」という言葉がなくても「職種、部署、地域によってできない措置がある」といった従業員間で措置の選択に差が生まれることを懸念する旨の回答を集計。

公平性を懸念する声が寄せられる中、83.3%が「法人全体で同じ措置を実施する」と回答しました。職種を分けずに法人全体で同じ措置を選択した場合、仮に選択肢が2つあったとしても、例えば店舗で働く従業員はテレワークを選択できないといった状況が起こり得ます。また職種で分けて措置の組み合わせを選択した場合でも、職種間で差が出ることによる不公平感が生じてしまうため、制度設計上の難しさが浮き彫りになりました。




4. 37.5%の大手法人が、「法改正を機に育児中以外の従業員も利用できる制度や施策を検討した」、または「今後検討していく」と回答
厚生労働省が発表した「令和3年度雇用均等調査」によれば、育児休業取得者がいた際の業務代替方法は、「補充を行わず他の社員が対応」が79.9%と最も高く、令和元年度(52.3%)と比較して割合が増加しています。育児休業取得者の仕事を代わりに支える同僚の負担の増加や不満が懸念される中、37.5%の大手法人が、法改正を機に育児中以外の従業員も利用できる制度や施策を検討した、もしくは今後検討していくと回答しました。




今回の調査では、柔軟な働き方を実現するための措置を円滑に行うための取り組みとして、不公平感を和らげる工夫をする法人の声が寄せられました。
「対象者以外の方の負担が増える可能性があるので、そのフォロー対策も合わせて提案している」
「制度利用者や周囲社員を問わず、組織全体で効率的な業務推進を図り、相互理解を深めて制度を利用しやすい組織文化の醸成を図るべく、伝わりやすい各制度の周知に取り組んでいる。」


5. 87.5%の大手法人が、育児中の従業員の満足度を上げるために最も重要なのが「制度を利用できる職場環境」と回答




総括(解説:WHI総研/社会保険労務士 井上 翔平)
厚生労働省が発表した人口動態統計によれば、2023年の合計特殊出生率は1.20となり、過去最低を更新しました。
日本は人口減少の一途を辿っており、子育て世代への支援を充実させ、出生数を増やす取り組みが急務です。また共働き世代が増加している中で、働きながら子どもを育てる環境の整備も同様に重要さを増しています。

調査の結果、5つの措置のうち2つ以上を実施している法人が77.8%でした。つまり本調査の調査対象である大半の大手法人においては、「柔軟な働き方を実現するための措置」を新たに導入する必要がないということがわかりました。
特に「短時間勤務制度」と「始業時刻等の変更(フレックスタイム制または時差出勤)」の実施率が高い結果となりました。短時間勤務制度については、育児介護休業法で3歳未満の子を養育する労働者に対して義務化されているため、3歳以降の子において実施している企業も多いと考えられます。

これから新たに実施する予定の措置として最も多かったのは「就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与」でした。業務への影響の少なさ、金銭面の負担のなさから養育両立支援休暇が選ばれる傾向にあります。養育両立支援休暇の付与を実施予定の企業13社のうち、7社が実施理由の1位として業務への影響の少なさまたは金銭面の負担の少なさを挙げていました。

本措置は、必ずしも企業全体で同じ措置を実施する必要はなく、職種や事業所によって異なる措置の組み合わせを選択することも可能です。しかし本調査では、83.3%の企業が「企業全体で同じ措置を実施する」との回答でした。
上記のように企業全体で同じ措置を実施する場合、製造現場の作業員や店舗の販売員といったテレワークやフレックスタイム制の利用が難しい職種もある中で、企業全体で同じ措置を実施するため、職種によって措置を利用できないという問題が起こり得ます。

また今回の措置に含まれる始業時間の変更、テレワーク、養育両立支援休暇の付与の実施にあたっては、同じ職場の従業員の理解も重要です。措置の利用によって、業務調整を行う場合は育児を行わない従業員への負担が増えることもあります。こうした負担増によって、育児を行わない従業員が不公平感を感じないようにケアする必要もあります。

これら職種間の不公平感、育児を行う従業員と行わない従業員への不公平感の対処が今回の法改正対応のポイントであり、具体的には 1.対象社員以外への制度の周知2.育児を行わない従業員も含めた福利厚生制度の拡充が重要であると考えます。

1.対象社員以外への制度の周知 今回新たに実施される措置については対象社員への個別周知が義務付けられていますが、前述したように措置を実施するにあたっては職場の他の社員の理解も必要不可欠です。育児を行う従業員が制度を利用しやすい環境を整えるためにも従業員全体が法改正の趣旨を理解して、協力する姿勢を持つことが重要です。

2.育児を行わない従業員も含めた福利厚生制度の拡充 育児を行う従業員のみを対象とした制度等を適用する場合、一部不公平感を感じる人が出てきてしまう可能性もあります。これに対処するためには「育児を行わない従業員も含めた福利厚生制度の拡充」も考えると良いでしょう。例えば子に限らない家族に対しても広く使える休暇等が考えられます。

今回の法改正について、法律の最低要件を満たすだけでなく、育児を行わない従業員も含めた福利厚生制度を考えるきっかけとして捉えてもよいのではないでしょうか。

解説者プロフィール


WHI 総研※・社会保険労務士 井上 翔平(いのうえ しょうへい)
大学卒業後、金融機関、調査会社を経て2022年1月にWHIへ入社し、現職。
当社ユーザー基盤を活かした調査・分析や、市場トレンドの調査に従事している。



※WHI総研:当社製品「COMPANY」の約1,200法人グループの利用実績を通して、大手法人人事部の人事制度設計や業務改善ノウハウの集約・分析・提言を行う組織

<調査概要>
調査名  :育児・介護休業法改正、柔軟な働き方を実現するための措置に関する実態調査
期間   :2025年1月27日~2月28日
調査機関 :自社調べ
対象    :当社製品「COMPANY」ユーザーである国内大手法人72法人
調査方法 :インターネットを利用したアンケート調査
有効回答数:当社製品「COMPANY」ユーザーである国内大手法人72法人

<引用・転載時のクレジット記載のお願い>
本リリース内容の転載にあたりましては、「Works Human Intelligence調べ」という表記をご利用ください。
本記事のグラフの内訳は、小数点第一位まで表示しています。そのため、端数処理の関係で内訳の和が100%にならない場合があります。
本調査の詳細レポートをご要望の方は、当社公式サイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
https://www.works-hi.co.jp/contact


WHIでは引き続き、大手法人の人事トレンドや業務実態について調査をしてまいります。

WHIについて
WHIは大手企業および公共・公益法人向け統合人事システム「COMPANY」の開発・販売・サポートの他、HR関連サービスの提供を行っています。「COMPANY」は、人事管理、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメント等、人的資本マネジメントにまつわる業務領域を広くカバーしており、約1,200法人グループへの導入実績を持つ、ERP市場 人事・給与業務分野 シェアNo.1※の製品です。
私たちは、「人に真価を。」というコーポレートブランドのもと、企業と従業員の両者の価値を最大化するソリューションを提供することで、すべての人が「真価」を発揮し、情熱と貢献意欲を持って「はたらく」を楽しむ社会を実現します。
※2022年度 ERP市場 - 人事・給与業務分野:ベンダー別売上金額シェア
 出典:ITR「ITR Market View:ERP市場2024」

会社概要
社名 :株式会社Works Human Intelligence
所在地:東京都港区赤坂1-12-32アーク森ビル21階
代表者:代表取締役最高経営責任者(CEO)安斎 富太郎 
事業 :大手法人向け統合人事システム「COMPANY」の開発・販売・サポート、HR関連サービスの提供
URL : https://www.works-hi.co.jp


* 会社名、製品名等はそれぞれ各社の商標または登録商標です。
* 本リリースに掲載された内容は発表日現在のものであり、予告なく変更または撤回される場合があります。また、本リリースに掲載された予測や将来の見通し等に関する情報は不確実なものであり、実際に生じる結果と異なる場合がありますので、予めご了承ください。

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