「さくらそう展 江戸の人々に愛された可憐(かれん)な花」が現在、都立神代植物公園(調布市深大寺元町5、TEL 042-483-2300)の屋外展示場で開催されている。
伝統的な「桜草花壇」。屋根は軒の付いた切妻、側面はよしず壁、背面は藍染め紙の組障子、棚は5段
サクラソウは山麓や川岸などの湿性の野原に生える多年草で、4月にかれんな花を咲かせる。その姿が江戸時代に人気を呼び、荒川沿岸の浮間ヶ原(東京都北区)や戸田ヶ原(埼玉県戸田市)に自生するサクラソウを鉢植えにして江戸の街で売り歩く「桜草売り」が春の風物詩になった。江戸中期には実生による育種が盛んになり、色も形もさまざまな品種が多く生まれた。現在でも「江戸の地に生えた野草から江戸の人たちが育て上げた唯一の園芸草花」として愛好されている。
同園には、「さくらそう会」が認定する約300品種のほとんどを保全する「サクラソウ品種コレクション」がある。普及活動や展示によって伝統園芸文化継承にも注力していることから「日本植物園協会ナショナルコレクション」に認定されている。同展では、作出年代別に並べて同コレクションを披露する。
併せて、江戸時代に創作された桜草園芸特有の陳列鑑賞手法「桜草花壇」も展示。咲いた花が配色よく互いを引き立て合うように鉢をひな壇に並べる、伝統的なサクラソウの見せ方だという。同会が寄付を受けて修復保全している、日本最古といわれる桜草花壇も展示する。
サクラソウは一品種ごとに桜草鉢に植える。江戸時代は身近な生活雑器だった「孫半斗鉢(まごはんとばち)」の底に穴を開けて転用していた。多孔質で栽培に適しており、繊細な花色を引き立て桜草栽培に最適だった。現在は入手困難なため、これを見本にした新たな桜草鉢が製造されている。
広報担当の土方千鶴さんは「現在に伝わる園芸品種の数々を伝統的な展示方式で観賞できる貴重な機会。江戸の人々に愛されたかれんなサクラソウの魅力を感じていただければ」と話す。
開園時間は9時30分~17時(最終入園は16時)。月曜休園(祝日の場合は翌日)。入園料は、一般=500円、65歳以上=250円、中学生=200円(都内在住・在学の場合は無料)、小学生以下無料。4月21日まで。