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調布・深大寺の仏具「磬」、国の重要文化財へ 里帰りから1年

導師の右横で磬架(けいか)につるしてたたく「孔雀文磬」

導師の右横で磬架(けいか)につるしてたたく「孔雀文磬」

 深大寺(調布市深大寺元町5、TEL 042-486-5511)が所蔵する鎌倉時代の仏具「孔雀文磬(くじゃくもんけい)」が間もなく、国の重要文化財に指定される。

表面。優美で繊細なクジャク文様は、原形が蝋(ろう)型だと考えられる

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 文化庁の文化審議会が3月26日、文部科学大臣に答申し、官報告示を経て正式指定となる。磬(けい)が重要文化財に指定されるのは1979(昭和54)年以来47年ぶり。

 磬とは、読経の際につり下げて撞木(しゅもく)で打ち鳴らす仏具。同寺の磬は「へ」の字形をした銅鋳造製で、表面には向かい合う2羽のクジャクがあしらわれている。裏面は右側に「武洲深大寺」「深沙(じんじゃ)王堂」、左側に「文永(ぶんえい)四年丁卯(ひのとう)」「十月日」の銘文がある。製作時に文字を鋳出す陽鋳(ようちゅう)のため、1267年10月に武州深大寺の深沙王堂の磬として製作されたことが確実。鎌倉時代の磬の基準作として優れ、深大寺の寺名が記された最古の史料である点などが高く評価された。

 銘文に含まれる文字「金偏に又の下に口」(磬の異体字とみられる)は文字史料に先例がなく、国語学・文字研究で貴重な発見。クジャク文様や銘文の柔らかな表現は鎌倉時代の特徴よりも平安時代の古様を示すことから、大正大学名誉教授・特遇教授の加島勝さんは「仏教工芸史上、極めて貴重で研究の進展が期待される」と話す。音階は西洋音楽の「ミ」、十二律では「平調(ひょうじょう)」に当たる。天台声明(しょうみょう)の基本音の一つで、四季では秋に該当する。

 この磬は長らく同寺を離れ、経緯不明のまま神奈川県相模原市の善勝寺(ぜんしょうじ)に伝わっていた。両寺で協議を重ね、善勝寺の文化財理解により2025年4月20日、深大寺に里帰りを果たした。善勝寺の川久保禪龍(ぜんりゅう)住職は「戦時中も供出せず深大寺へ還帰(げんき)できたのは奇跡。当時の住職や檀信徒総代もきっと喜んでいる」と話す。武蔵野美術大学教授で元文化庁文化財鑑査官の奥健夫さんは「別の寺院の名があっても先人の志に連なろうと、あえて残すことがある。それが今回、仏教工芸品の価値を高めた」と評価。「還帰をきっかけに注目され、今回の指定につながった」とも。

 深大寺の張堂興昭(ちょうどう・こうしょう)住職は「昨年の還帰から1年たたずに指定を受けることは、いかに大切な文化財であるかを示す。文化財は本来の地にあるべきと善勝寺の皆さまが決断されたことは、全国の類似例において範とすべき卓識。改めて感謝し、善勝寺の名を末永く顕彰する」と敬意を表す。

 磬は現在、文化財調査のため京都の施設で保管され、4月25日~5月17日に京都文化博物館の新指定展に出陳される。深大寺での公開は秋の予定。

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