調布に異例の木造4階「音楽の学びや」 桐朋学園大学の新校舎、建設進む

仙川新校舎完成イメージ 写真提供前田建設工業

仙川新校舎完成イメージ 写真提供前田建設工業

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 世界的な指揮者の小澤征爾さんなど著名な音楽家を輩出してきた桐朋学園大学(梅津時比古学長)の音楽部門・仙川キャンパス(調布市若葉町1)で、長年、「旧館」の名称で親しまれてきた校舎の新築工事が本格化している。

桐朋学園大学の音楽部門・仙川キャンパス・工事中の新校舎外観

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 今秋には建物本体が完成し一部授業も始まる。新校舎は木造4階(地下1階)建てで、同大学や建築関係者によると、木造の学校施設としては、同様の規模で4階以上の建物は国内では例がないという。

 設計・施工は前田建設工業(千代田区)で、建物デザインなどに建築家の隈研吾さんが共同で参加した。隈さんは日本伝統の木造工法を生かした多くの作品で知られ、昨年12月、2020年東京五輪のメイン会場となる「新国立競技場」建設計画見直しに伴う公募審査で、「水と緑」をテーマにした作品が正式採用され、国内外で脚光を浴びた。同大学の新校舎は、4年後に完成する「新国立競技場」に先駆け、「和」の様式を取り入れた新時代の「音楽の学びや」として注目を集めそうだ。

 新校舎は、同大学キャンパス西側にある新館と短大校舎の間に挟まれた敷地に建設が進んでいる。計画当初から、学内の建設委員会(委員長、小森谷泉・同大教授)が「木造」案を中心になり構想を検討。昨年2月の業者公募入札の際にも木造を条件に選考が行われ、前田建設工業に決まった。

 校舎地上部分は高さ約19メートル、地下1階が鉄筋コンクリート構造で、延べ床面積は約4800平方メートル。柱と梁(はり)を組み合わせた木造軸組み工法で、国産のカラマツ、スギなどのほか輸入材を使用し、木材を石こうボードで覆うなどした耐火構造になっている。建物外壁には能登ヒバを用い、「木立」をイメージした温かみのある外観が特徴だ。耐震性についても、都心部ではより厳しい法的基準値の1.25倍で設計されており、文部科学省から「耐震補助金制度」の認可を受けた。

 今回、設計デザインに共同参加した隈さんは、フランスで芸術センターの音楽ホールなどを手掛けた経験を生かし、教室の壁に傾斜をつけるなど「木と音の響き合いに配慮した」と話す。

 1階は教職員関係の事務スペースで、2階~4階に大中小合わせて25の講義室とレッスン室、地下1階に計28のレッスン室が置かれる。全室の中で最も大きいのが3階、4階を吹き抜けにした特大講義室(広さ約300平方メートル)で、収容人数は200人。6月初めに建物全体の木軸構造工事が完了し、現在、内装仕上げ作業が始まっている。建物本体の完成はエントランスの一部を残して今年11月末の予定。12月以降には、調布キャンパス(調布ヶ丘1)で行っていた授業・実技レッスンの一部が新校舎に移る。新校舎は来年4月の新学期から本格稼働する予定だ。

 学校法人「桐朋学園」の音楽部門の創設は1948(昭和23)年。現在も続く「子どものための音楽教室」が前身で、男女共学の「桐朋女子高等学校音楽科」「桐朋学園大学音楽部」のほか、1999年には「同大学院大学音楽研究科」も併設され、一貫した音楽教育の実践で高い評価を受けている。ピアノ、弦楽器、指揮、作曲などの各専攻は、少数精鋭教育で知られ、小澤征爾さんなど優れた音楽家を輩出している。

 新校舎計画に意欲的に取り組んできた梅津学長は「革新的であることが伝統的ということ」と「和」の世界と融合する音楽への思いを語り、建設委員会委員長の小森谷教授(ピアノ科)も、「木の柔らかさ」と「音の響き」を学生たちが体で感じ、感性、表現力豊かな「熟成した演奏家」に育ってほしいと大きな期待を寄せている。

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