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みん経トピックス

特集

インタビュー2014-12-26

シリーズ【調布の老舗探訪】Vol.4
『御用を聞くこと』
-有限会社桐屋酒店 代表取締役 萩原 治さん

 本インタビューは調布の地域に根ざし商いをしている老舗にスポットを当て紹介していく特集の4回目。今回は、明治初期に調布市飛田給で創業し、現在酒販店を営む「桐屋酒店」4代目店主、萩原治(おさむ)さんに「桐屋」の歴史・酒屋に対する思いを聞いた。

桐屋酒店店主萩原治さん

■桐屋酒店の歩み

-明治初期から100年以上営業されている桐屋酒店ですが、これまでの店の歩みについて教えてください。

 かやぶき屋根のよろず屋『喜利屋』がうちの店の始まりだったと聞いています。家の土間に商品を置き、勘定する帳場に座って店番をする、住まいと一体になった日本家屋の店でした。40年ほど前に建て替えるまではずっとその建物だったので、今でも店の雰囲気をよく覚えています。よろず屋で、広く生活日用品をそろえる中で、お酒も取り扱っていたと聞いています。
 当時は、店の目の前の甲州街道沿いに多くの商店が並んでいて、ご近所さんも皆商売をしていたようです。飛田給には「野口」「榎本」「板橋」と同じ名字が多いため、ご近所さんは皆店の屋号で呼び合っていました。野菜の種を売っていた家は「たねや」、鞍(くら)などの馬具を扱う「くらや」、その他「せんべいや」「たびや」「すみや」「ほうきや」…など、名字よりもたくさんの店があったのでしょう。今でもその名残でご近所同士、屋号で呼び合うのが習慣になっています。
 名前の通りに言ったら、うちは「さかや(酒屋)」なのですが、不思議と「きりや」と呼ばれています。
 本当は「萩原」なのですが…、呼び方は「きりやのオサムちゃん」。いつからか、「桐屋」という字になったのですが、飛田給の周辺のこの地域はそんな古い縁でつながっています。
 今でも隣組として、何かあったら助け合う近所の関係が続いています。
 18歳の時、父が大きな病気をしたことがきっかけで、卒業と同時に店を継ぐことになりました。

桐屋酒店で使われていた酒壺

■「御用聞き」は阿吽(あうん)の呼吸。

-酒屋と聞くと、勝手口を出入りしているイメージがあるのですが、普段どのように仕事をされているのでしょうか。

 よく昭和期のテレビアニメなどで目にする「御用聞き」という、家やお得意さま先を回ってお困りごとに応える販売の仕方がありますが、うちの店は今でもそれをやっています。
 でも実はこれ、非常に効率の悪い営業方法なんです。一軒一軒家を回るには時間も手間もかかるし、その上、長話をしても何も買っていただけないこともあるわけです。
 それでも、「御用聞き」のスタイルを続けているのには訳があります。今は昔からのお得意さまが高齢化して、訪問する先は50歳後半から80歳以上の方のお宅。お酒をはじめ、お年寄り一人では重くて運ぶのに大変なので、「御用聞き」がどうしても必要な方もいるのです。お年寄りの健康確認にもなるため、たとえ塩一本であろうと配達無料で行かせてもらっています。
 今回、取材の紹介をしてくださった竹乃屋さんも子どものころから通わせてもらっていて、先々代のご主人からは何度もお年玉をもらいました。今でも御用聞きに1回行くと、「こんちは!!」とおかみさんから板長さんまで30分近く話し込んできます。世間話の中で、「そういえばそろそろ、あの調味料が切れるころじゃないですか?」と聞くと、「あら本当!」と驚かれることがありますが、お得意さまの台所情報や好みは大体頭に入っているものなのです。
 今、酒の販売の6割は御用聞きと配達、残りが店頭販売ですから、今でも御用聞きが中心です。
 地域のコミュニケーションが減り、お隣さんの顔も知らなくなってきてしまったが、フェーストゥフェースでのお客さまとのつながりを大事にして、これからも「御用聞き」を続けていきたいと考えています。心掛けているのが店頭や歩道の清掃時、すれ違う名前も知らない方とのあいさつです。

萩原さんオススメのひやおろし

-忘れられない「御用聞き」はありますか。

 若いころお世話になっていたトンカツ屋さんの頼まれ事をうっかり忘れてしまっていたことがありました。「お前、どうなってるんだ!!」とご主人にそれはもう激しく怒られて、土下座をして謝りました。その後もうっかり者の私は度々怒られるので、そのお得意さまの所に行きにくい気持ちが生まれてしまいました。でも、そのご主人は他の取引先を変えることがあっても、うちだけはずっと指名を続けてくれました。
 怒ってくれるお客さまを大切にすることを学びました。

■酒屋の『これまで』と『今』

-昔と今を比べ、お酒の販売に変化はありましたか?

 酒の販売は昭和13年から免許制度が生まれ、さまざまな規制の中で特権的な商売でした。酒屋を開店するには、資金が多く必要で手軽に手を出せない商売と言われていました。時代の変化とともに制度が徐々に緩和され、酒を扱える人が増え、スーパーやコンビニでも手軽に酒が買えるようになりました。一時は100軒を超えた調布市内の酒屋が今では40軒を切っていると聞いています。
 価格競争が激しくなる中で、私たち個人酒屋では「有名銘柄の商品を置いていれば間違いない」という昔の発想ではお客さんの要望に応えられないことが多くなってきています。

-お酒の品ぞろえなどお店でのこだわっていることがあるのでしょうか。

 お酒の売れゆきはその時々のメディアでの取り上げられ方に大きく左右されます。
 広告チラシやCM、最近では朝の連続テレビ小説の影響でウイスキーの売れ行きが伸びています。ウイスキーを買い求める方が一気に増えるので、数の少ない銘柄は品切れ状態です。
 一方で、「世間に知られていなくても、安くてうまい酒」はたくさんあります。うちのお店では、私が売りたいと思ったいい酒を、銘柄を絞っておくようにしています。
 まだまだ努力や工夫をできると思う所はありますが、御用聞きとお客さまを大切にすることをこれからも貫いていきたいと考えています。

看板猫のギズモ

 店主おすすめ、桐屋酒店ならではの品ぞろえも。山梨の小さなワイナリーのワインもお薦めです。

-桐屋酒店ならではのサービスなどはありますか。

 生ビールサーバーの無料レンタルを行っています。調布市内・近郊の公園やバーベキュー場・イベント会場などで使いたい場合には設置にも伺っています。

レンタル中の生ビールサーバー桐屋酒店の名物「生ビールサーバーの無料レンタル」
※別途、生だる・冷却用の板氷費用が必要

■次回の探訪は調布の老舗「増岡工務店」

-最後に、次回のインタビュー先となる「調布の老舗」をご紹介ください。

 では、三代にわたってお付き合いをさせていただいている増岡工務店さんを紹介します。老舗工務店ならではのお話が聞けると思います。

店舗外観

【有限会社 桐屋酒店】
住所:〒182-0036 東京都調布市飛田給1-52-4
電話番号:090-2410-5884
営業時間:7時30分~21時
定休日:不定休

有限会社 桐屋酒店ホームページ

■萩原治さんプロフィール
調布市飛田給出身、在住。
幼い頃から生家である、桐屋酒店で両親の手伝いをし、高校卒業と同時に働き始める。
昔ながらの「御用聞き」を今も続けながら、生ビールサーバーの配達・設置サービス等、新サービスの提供から、ご近所の子猫の里親捜しまで積極的に行う。

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