東京アートミュージアム(調布市仙川町1、TEL 03-3305-8686)で現在、「奥村浩之・笹井祐子展 風と遊ぶところ-con aire mexicano」が開催されている。
笹井祐子さん「Cempasu´chil」2024年(パネルに和紙、アルキド樹脂絵具、パステルほか)
奥村さんは1963(昭和38)年石川県金沢市生まれ。1988(昭和63)年に金沢美術工芸大学大学院修士課程を修了すると、翌年メキシコに渡り、以来、彫刻制作を続けている。国内外で展覧会を開き、金沢21世紀美術館など多くの施設に作品が収蔵されている。奥村さんは「メキシコ古代文明の遺跡や巨石遺跡に出合い、強烈な刺激を受けた。ゆったりと流れる『メキシコの時間』と歩みを合わせ、幼少期から親しんだ石と対話しながら制作している」と話す。同展については、「重量感を持ち堅固で寡黙な静的素材である石から、いかなる『石の声』を聞き取り、どのような生命感を吹き込ませることができるか」とも。
笹井さんは1966(昭和41)年東京都生まれ。1990(平成2)年に日本大学芸術学部卒業後、2010(平成22)年に同大海外派遣研究員としてメキシコへ行く。2022年に南島原市アートビレッジ・シラキノ プロジェクトAIR事業に招聘(しょうへい)され、現在は同大芸術学部で教授を務める。笹井さんは「メキシコの強い太陽がもたらす豊かな色彩と陰影、そして多様な文化に触発され、日本風土との対照の中で制作を続けてきた」と話す。「『頭で考え五感で感じる』のではなく『身体で考え心で感じる』こと。花や葉の匂い、鳥や風、空の響きとの出合いを重ね、心身を開く体験を形にしてきた」とも。同展については、「メキシコ原産のイチジク科樹皮から作られるアマテ紙や、日本伝統のコウゾによる和紙など、軽やかな紙の素材を用いて『動』から『静』へ向かう表現を展開する」と話す。
同展は、2人の作家がメキシコでの経験を基にして「風」をテーマに表現する展覧会。石と紙という対照的な素材の緊張感の中で風を可視化する。奥村さんは石を素材にして、物質の内奥に潜む「静」から「動」へ。一方、笹井さんは紙を用いて、揺らぎや痕跡を内包させながら「動」から「静」へ導く。同館創立者の伊藤容子さんは「美術館の空間で交錯する両者の作品はいかに響き合い、あるいは共鳴するだろうか」と話す。「見る者は単なる鑑賞者にとどまらず、『風』のように空間を往還する主体となり得る。『薫風自南来(くんぷうじなんらい=くんぷうみなみよりきたる)』の言葉が示すように、爽やかで心地よい『作風』をこの空間に立ち上げ、鑑賞者の心の深奥へ静かに吹き渡ることを願う」とも。
現在、向かいにある「プラザギャラリー」(TEL 03-3300-1010)で関連展示として「風の詩-Canto del viento 奥村浩之・笹井祐子展」を開催している。
いずれも開館時間は11時~18時30分。月曜~水曜休館。7月26日まで。東京アートミュージアムの入館料は、一般=500円、大学生・高校生=400円、小中学生=300円。プラザギャラリーは無料。