西調布の洋食店「クリスマス亭」(調布市上石原1)が6月30日で閉店し、30年の歴史に幕を閉じる。
「クリスマス亭」石井満社長が手掛けた多くの店は調布に新しいスタイルをもたらした
店主の石井満さんが、若い頃に「修業」の旅をしたアメリカで資金が底を突き、入ったレストランで食い逃げをしようとした罪滅ぼしに皿洗いをしたところ、手際の良さを褒められ、最終日にはパーティーとアルバイト代をもらい励まされたという。その時、「日本にこんな店をつくって招待する」と約束し、宣言通り、1996(平成8)年にアメリカのレストランを再現し、サンタクロースの家に招かれたようなもてなしをしたいと、「クリスマス亭」と名付けた同店をオープンした。
市街地や駅から離れた立地ながら、赤レンガと白い外壁、オールドアメリカンスタイルの「スケール感ある」外観で存在感を示し続けた同店。石井さんの趣味とセンスを生かした個性的で広々とした店内で提供するメニューは、得意の肉料理のほか、多くのファンを持つ「東京ハヤシライス」や「オムハヤシライス」など家庭的な洋食が中心。当時はまだ珍しかった「箸でも食べられる気取らない洋食スタイル」の先駆けで、スタッフの丁寧で気さくな接客とともに、家族連れや幅広い客層に愛された。一足先に石井さんが開いた調布駅近くの「CAFE BUNS(カフェバーンズ)」とともに、当時の調布に新しい飲食店のスタイルをもたらした。
同じく飲食店経営などを手がけていた両親から多くのことを学び、何より「人」を大切にしてきたという石井さん。人を喜ばせることが好きで、「ビッグな会社より、ナイスな会社」を信条に、40年以上、街と人を見つめてきた。現在72歳。「自分の都合で、社員1人も食べていけないようにしてはいけない、後始末をきれいに」という母の言葉が常に心にあったと言い、「いつか海の近くで暮らしたい」という「わがまま」な夢への家族の後押しがあったことや、「調布のためにも絶対に壊してはいけない」と決めていた同店舗を譲れる先が決まったことなど、信条や転機が重なり、昨年、自身が手がける最後の店となる同店の幕引きを決断した。
閉店を発表してからも惜しむ市民や常連客などが後を絶たない。石井さんは「最後の日まで予約をたくさん頂いている。長年一緒にやってきたスタッフにも最後まで苦労かけていけるが、みんな喜んで応えてくれて、本当にうれしいしありがたい」と感謝を口にする。「調布はいい街。これまでたくさんの仲間や、頑張っている飲食店の後輩たちにも恵まれて本当にうれしい。ますます発展するだろうが、あまり大きくなりすぎないで、ちょうど良い街であり続けてほしい。自分はここを離れるが、いつでも飛んで帰れるように拠点は残していく」と調布への思いも話す。
最終日まで石井さんらしく、クリスマスさながらのにぎやかさの中で店の明かりを落とし、次の夢に向けステージを移す。
営業時間は11時30分~22時。